自身や部下の恒常的なスキルアップは、全てのビジネスパーソンに求められています。 本稿では気合や根性に頼らず、学ぶ環境をデザインすることで、学ぶ意欲の維持・向上させることを検討します。
本稿では、市川伸一氏(東京大学大学院)の『学習動機の2要因モデル』を紹介し、それを社会人のスキルアップに必要な学ぶ意欲の維持・向上への活用方法について検討しています。
私の仕事は、主に企業で行なわれる研修の企画と、そこで使用する教材の開発です。
実際の研修は、クライアントである研修事業者や社内教育担当者の方々が実施しますので、研修業界でも黒子的な存在といえます。
私の寄稿では、そのような業務を通じて得た知識やノウハウを、なるべく具体例を添えて紹介していきたいと考えています。
研修企画・開発の裏側を知ることで、読者のみなさまご自身のスキルアップや、部下の育成、組織のレベルアップに少しでも貢献できれば幸いです。
○動機の源を理解し、動機をコントロールする
人はなぜ学習をするのか。
その動機の整理を試みたのが『学習動機の2要因モデル』です。
このモデルを理解し、活用することで、自身や関係者の学習意欲を維持・向上させることができると考えられます。
気合や根性ではなく、動機の「源」を理解することで、動機のコントロールを試みる、と言ってもよいでしょう。
2つの要因とは『学習内容の功利性』と『学習内容の重要性』です。
『学習内容の功利性』は、学習することで得られる利益は直接的なものか、間接的なものか、という観点で分類しています。
一方、『学習内容の重要性』は、学習目的と学習内容の関連性が高いか、低いか、という観点で分類しています。
この2つの軸から浮かび上がった6つの志向は以下の通りです。
・充実志向 ・・・ 学習自体が楽しいから学習する
・訓練志向 ・・・ 知力が鍛えられるから学習する
・実用志向 ・・・ 仕事や生活に役立つから学習する
・関係志向 ・・・ 他の人も学習するから学習する
・自尊志向 ・・・ プライドを満たすために学習する
・報酬志向 ・・・ 学習すると報酬が得られるから学習する
同じ選抜研修に参加する社員たちの学習意欲でも、さらなる自身のスキルアップをめざした「訓練志向」のものや、現場での仕事に生かそうとする「実用志向」、選抜されたという「自尊志向」など、さまざまなものがある可能性があるのです。
逆に言えば、このような志向を理解し、活用することで、より参加者の学習意欲を高めることもできるのです。
○不適切な外発的動機付けは逆効果になる
2要因モデルに斜めの軸があります。
これは、『内発的動機付け』と『外発的動機付け』を示しています。
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2007.05.03
2007.05.30
株式会社エデュテイメントプラネット 代表取締役
社内教育担当者・教育事業者・学校法人を対象に、研修(授業)企画・教材開発サービスを行う。 特に、繰り返し実施する研修で、講師の品質に大きく左右されず、常に一定品質以上の教育効果を生むことをめざした研修の企画・開発を行っている。 開発した教材のテーマやメディアは多岐に渡り、ビジネスゲーム『ロボロボ』は韓国大手製鉄会社でも活用されている。