ミック・ジャガーに学ぶマーケティングセンス

2008.05.11

営業・マーケティング

ミック・ジャガーに学ぶマーケティングセンス

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

ミック・ジャガーといえばローリング・ストーンズ。一度ワールドツアーに出れば、世界中で600万人を動員するお化けロックバンドである。そのグループを50年近くまとめてきたボスのやり方から、何を学べるだろうか。

全世界31カ国を回り,123回ステージに立つ。2005年から翌年にか
けて行なわれた『ア・ビガー・バン・ワールドツアー』byザ・ロー
リング・ストーンズである。総動員数にして600万人といわれる。

アメリカはもちろん日本、ヨーロッパにロシアやイスラエルなども
回っている。チケットは各国の物価事情に応じて価格が変わるのだろ
うが、アメリカではステージ近くの席で6万円ぐらいしたらしい。日
本でも最高がゴールデン・サークル席の65,000円、S席で35,000円
はしたという。

ごくアバウトな計算で仮に全世界平均でチケット単価を1万円とすれ
ば、動員数が600万人で600億円だ。もちろんツアーの総売上ともな
ればこの額には収まりきらない。コンサート会場では飲食にTシャツ
をはじめとするさまざまなグッズにCDも販売される。ざっと見積
もって年間で1000億円ぐらいの売上とみてよいだろう。

では、このワールドツアーの原価はどんなもんだろうか。

仮に1会場あたりのコストが人件費も込みで1億だとしよう。という
ことは132カ所なら、トータル132億円になる。さらにステージセッ
トそのものが10億円で、これは予備を見て4セット用意したとす
る。あとは移動コストとしてどれぐらいを見込むか。つい先日シルベ
スター・スタローンが日本に来た時のプライベートジェットのレンタ
ル料が3500万円だといっていた。これをベースに考えてざっと1回
あたり1億円として総額132億円。グッズについては原価率を40%
とみて160億円。

非常にアバウトではあるが、1000億円の売上に対して原価が500億
円ぐらい。粗利が実に500億円にもなる。ここからストーンズのメン
バーが受けとるギャラがどれぐらいにの額になるのか、想像もつかな
い。ともかくビッグビジネスであることだけは確かだ。

このビジネスのコア・コンピタンスは人である。中心人物はミック・
ジャガーだ(音楽についてはキース・リチャーズがミックと同じポジ
ションにいるが、ことマーケティングに関してはミックが仕切ってい
ると考えていいだろう)。ミック・ジャガーは今年65歳、スタッフ
までを含むストーンズグループを一企業として捉えるなら、極めて優
れた経営者といえはしないか。

そもそもミックは初めから、バンドが金になるかもしれないと思って
始めた節がある。ミックがキースと出会い活動を始めたのは18のと
きだが、当時彼は奨学金をもらいながら大学に通っていたという。こ
うした人物はイギリスではおそらく相当なインテリであるはずだ。そ
こで将来の展望を考えたときにミックは当然、バンドをやるか大学卒
業を目指すかを考えたはずだ。両方を天秤にかけた末に選んだのがバ
ンドであり、その理由としてはおぼろげではあっても自分たちが売れ
るための目算を持っていたからだろう。

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