全日空が4月から国内線の一部に導入したプレミアムクラスについて、「シートの仕様が宣伝と違う」と、複数の苦情が寄せられという。
引用:http://www.news.livdoor.com/article/detail/33632820/
新シートの導入は実際は6月からの予定であったそうだ。
三國連太郎、佐藤浩市親子が起用され、話題を集めたCMやポスターには、確かにシート切り替え時期に関する告知はなかった。問題の火種はそこにあったのだ。
筆者は新幹線マニア故、短距離の国内移動に飛行機はほとんど使わないが、先月広島出張で同クラスを利用した。実感としては、シート形状はさほど気にならなかった。それより、機内スタッフの応対レベルが一層向上したことや軽食メニュー内容への工夫など、ソフト面の拡充が感じられた。
しかし、そうしたサービスより、あくまでシート形状にこだわる顧客層も少なからず存在したということなのだ。
全日空の広報によると、(これまでのスーパーシートプレミアムからプレミアムクラスへの変更は)「座席間隔(の30センチ拡張)や、(軽食や酒類の充実を含む)もてなしを含めた総合的な質の高さを目指したサービス」としながらも、「シートの違いについては説明不足だった」としている。
同社としては、今までの「スーパーなシートでのプレミアム(特別)感」から、「総合的な特別感を提供するサービス」へとさらにレベルをあげようとい意図だったのだろう。今まではシートが主。これからは、サービスが主で、シートが従のはずだったのだ。
しかし、残念なことに一部の顧客にはそれが評価されず、「提供価値のアンマッチ」が起こってしまったのだ。
国内線での乗機時間は短く、上空でパソコンなどが使えるタイミングも少ないため、本来的には過度な機能やサイズはシートに不要に思われる。
しかし、新シートのセールスポイントの一つには、「隣席から顔を見られない形状」というものがある。その点から考えると、少々論理は飛躍するが、苦情の主は、機内でのプライバシーを気にするかなりのヘビーユーザーかもしれない。だとすれば、同社にとっては由々しき事態だったことだろう。
自社が良かれと思うポイントと顧客の求める内容は、必ずしも一致しない。まして、顧客は一律ではない。
「誰が、どんな価値を求めているのか」。
提供価値のアンマッチを起こさないため、この事例は、他山の石としたいところだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。