ダイヤモンドオンラインが報じた、トヨタに関する情報が予想以上のスピードで、ネットで、またリアルのビジネスシーンで伝わっているようだ。筆者は基本的には賛成だが、その主旨が伝播の課程で歪まないよう願っている。
同サイトの記事のタイトルは<トヨタグループが「パワーポイント」自粛令!?>だ。
http://diamond.jp/series/analysis/10003/
タイトル下のサマリーは以下のようにまとめられている。<トヨタグループ内で、マイクロソフトの「パワーポイント」使用の自粛ムードが広がっている。事の発端は、コスト削減を求める渡辺社長の発言だった。それにしてもなぜパワーポイント自粛なのか?>
渡辺社長の発言は5月8日の決算発表におけるものだということだが、その主旨は、トヨタらしい「無駄の追放」だと解釈すべきだろう。その言葉は以下のように紹介されている。
<「社内の意識はまだまだ甘い。昔は1枚の紙に(用件を)起承転結で内容をきちんとまとめたものだが、今は何でもパワーポイント。枚数も多いし、総天然色でカラーコピーも多用して無駄だ」>
ここでいう「無駄」とは、
1.経費の無駄
2.資源の無駄
3.作成時間の無駄
4.読み手に費やさせる時間の無駄
の以上の4つに分類できる。
確かにトヨタの社長が見る資料においては、ほぼ間違いなく1~4の主旨で指摘の通りだろう。しかし、時と場合によりけりなこともある。ダイヤモンドオンラインが伝えるように、<トヨタを頂点とする産業ピラミッドの隅々にまでその鶴の一声は行き渡り、実際にパワーポイントやカラーコピーの自粛ムードが急速に広がっている>というのは少々困りものだ。1~4をきちんと分解して、無駄の中の明らかな「冗費」の部分だけを削減したいものだ。
1の社内経費の無駄は、どの企業でも看過できないはずだ。2の環境も各企業がCSRに配慮している中、無視できない。しかし、当然のことながらカラーの方が分かりやすい場合も少なくない。実際においては、そもそも、ハードコピーの配布が必要なのか。それはカラーの必要があるのかという見直しから着手したい。
3の作成時間と4の読み手の時間の無駄も、確かに昨今のパワーポイントのプレゼンはボリュームが多く、アニメーションが多用されていたりと、作成にも説明にも時間がかかるものが多い。
それに対し、渡辺社長は「一枚にまとめよ」とカイゼンの指示をしている。これは、ある意味正しい。
役職者、特に役員レベルに対してプレゼンを行う場合、短ければいわゆる「エレベーターピッチ」に近いものになることが多い。エレベーターに乗り合せて、そのチャンスに目的階に着くまでにプレゼンするのがエレベーターピッチだ。そこまで短時間でないにしても、10分と時間がもらえないこともある。この場合「一枚にまとめる」は有効だ。役員レベルともなれば、その短時間での判断を行う能力を有しているのが前提なので、プレゼンの受け手も時間拘束されないで済む。
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2008.05.27
2008.05.28
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。