とかく評判の悪かった「せんとくん」の刺客として「まんとくん」が登場した。が、筆者は一目見たときに「こりゃイカン!」と思ってしまった。そのわけは・・・。
奈良県で2010年に開かれる平城遷都1300年祭のマスコットキャラクター登場したのが2月12日のこと。しかし、世間の反応は冷たかった。
平城遷都1300年記念事業協会によるデザイン案選定過程の不透明性や、デザインの著作権を500万円で買い取るという金額妥当性に対する疑義。デザインそのものにも、「可愛くない」「(頭に角を生やすなど)仏を侮辱している」と批判殺到だった。
そのガス抜きの意図も込めてか、委員会はキャラクターの愛称を公募し、4月12日に「せんとくん」という名前が決まった。
さて、こうした一連の騒動に対し、市民団体の「クリエイターズ会議・大和」が6月2日に「せんとくん」の対抗馬、もしくは刺客を発表した。その名は「まんとくん」。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0806/02/news073.html
デザインと名前の由来は<鹿のキャラクターが、朱雀門を模した帽子をかぶり、白いマントを着けたデザイン。白いマントには「1300年という節目、新たな気持ちで次代へ」という意味><漢字は「万人くん」で、万人に愛されて大きく育つよう祈りを込めて名付けたという。「万葉集」の万人、都に満ちる「満都」もかけた。>だそうだ。
と、コトの経緯と「まんとくん」の紹介は以上にして、筆者の感想。冒頭に記したとおり、「こりゃイカン!」である。残念ながら「まんとくん」は「せんとくん」をcheer up(盛り上げ)こそすれ、対抗も討つこともできないように思う。
多くの人が気付いたであろう。まず名前。
「せんと」に対して「まんと」。せんとくんの「せん」」は「遷都」に由来するのだろうが、「せん・まん」となれば「千・万」で、セットに感じてしまう。まんとくんのデザインも鹿なので、やはり角から離れられていない。
「せんとくん」対抗を意識し、それを上回ろうとするあまり、結果として似通った路線になってしまった感が否めない。
こうした「キャラがかぶる」という事態は「チャレンジャー」に取っては最悪なポジションである。悪評は多々あれど、投下費用や今までのメディアへの露出度からすれば、「せんとくん」は間違いなくディフェンディング・チャンピオンである。マーケティングの定石からすれば、チャレンジャーの戦い方は「徹底した差別化」である。「自分たちは違うんだ!」というポジションの示し方や、差別化要素をできるだけ多く盛り込んでアピールしなければ、チャンピオンの存在に「同質化」し消し去られてしまうことになる。
その意味からして、「まんとくん」は残念ながら、デザインでもネーミングでも「せんとくん」を超えることはできないように考えられる。
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2008.06.16
2008.07.17
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。