カップヌードル・「苦渋の値上げ」で「売り上げ半減」の衝撃

2008.06.19

営業・マーケティング

カップヌードル・「苦渋の値上げ」で「売り上げ半減」の衝撃

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

原材料の高騰によって食料品などが相次ぐ値上げに踏み切った。その中でも売り上げ減少に最も大きく影響したのが日清・カップヌードルだろう。値上げ前比-52%と半減以上。その原因と、同社が値上げに踏み切らざるを得なかった理由を探ってみたい。

価格戦略(Pricing)はマーケティング4P(Product・Price・Place・Promotion)のうち、利益に直結するだけに最も慎重を要する施策であることは言うまでもない。製品を企画し製造する・販路を開拓し維持する・購入者とのコミュニケーションを展開する。他の3つのPは全て「コスト」が発生する。言い換えれば、利益創出は最後のPriceの設定次第ということなのだ。

しかし、原材料費などの世界的な高騰は、メーカーにもはや値上げを余儀なくさせ、多くの食品が値上げに踏み切った。
日経新聞6月17日朝刊より。<値上げ食品の売上高減、節約志向で自主企画品を選好 日経調査 >。Web版には記事のサマリーが掲載されている。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080617AT2F1200M16062008.html
記事中にある<日本経済新聞社が主要15品について、日経POS(販売時点情報管理)データと店舗や食品会社への聞き取りで調べた。>とする内容はWebに掲出されていないので、その内容を転載・考察しているBlogへのリンクを以下に挙げる。
http://www.costdown.co.jp/blog/2008/06/post_917.html

ここで目をひくのはやはりカップヌードルだ。売り上げ-52%。この数字から、ここまで売り上げが激減した理由と、それでも値上げしか手段がなかったという背景がおぼろげに見えてくる。

■カップヌードルの「カスタマーバリュー」は88円 or 100円
「カスタマーバリュー」とは、その製品に対し、顧客がいくら払ってもいいと感じる値であり、製品価値が高く評価されている場合、製造原価を大きく上回ることになる。逆に、お客の価値に合致しない場合、原価割れの数字が出てくる場合もある。今回は後者だったということだろう。
ネット上で今回の値上げに関する反応を見てみると、同製品のカスタマーバリューは、スーパーなどの特売で一般的となっている88円という価格と、ワンコインで買える100円という価格に集約されるようだ。希望価格は155円から170円(15円値上げ)だが、店頭実勢価格は88円から118円と30円の値上げとなっている。値上げ前の88円が定着していたことに加え、ワンコインの気軽さを失ったことが大きく影響したと考えられる。

■88円は妥当だったのか?
そもそもの88円という価格でどの程度の利益が出ていたのかといえば、それ自体が疑問だ。前述の通り88円は特売価格。目玉商品としての価格である。利益ギリギリ、もしくは集客に主眼を置いて戦略的に赤字を覚悟した価格設定を「ロスリーダー・プライシング」という。その価格が定着してしまっていたことも大きな不幸と言えるだろう。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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