昨今、環境に配慮した製品を総称して「エコプロダクツ」と呼び、各企業が独自に基準を定めたり、企業が集い、展示会を開いたりするという動きが活発である。そんな中で、ちょっとビミョーな製品が登場した。
<使い切り「エコデジカメ」 プラザクリエイトが8月発売>
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080705AT1C0400L04072008.html
上記、日経新聞の記事によると<最大50枚を撮影した段階でカメラを返して現像を依頼。現像後のカメラはリサイクルして何度も再販売><廃棄された携帯電話の部品を使って1280―1980円の低価格を実現>という。
何度でも再販売・廃棄された部品を再利用・・・と言われると、「おお、何ともエコじゃないか!」と脊髄反応してしまうが、ちょっと踏みとどまって考えてみたい。
今日のエコな世の中では「3R:リデュース、リユース、リサイクル」が重要視されている。確かにこの製品は社会の要請に添ったものであると言えるだろう。大量に廃棄される携帯電話の端末をリサイクルするなんて、機種変更時の環境に対する罪悪感を払拭してくれるようでありがたい。
が、ふと考えると、この商品は「誰が」「どんなシーンで」使うと、「どんなベネフィットがある」のだろうと疑問符が点灯してしまう。
まずは「誰」=「ターゲット」が見えない。
モノを売るには、世の中にどのようなニーズがあるのかを見極め、ニーズの内容によって区分けし、その中からどの区分を狙うかターゲットを決め、そのターゲットにどのように魅力を打ち出すかを考えなければならない。Segmentation→Targeting→Positioningという一連の流れだ。それが、この「エコデジカメ」ではよく見えないのだ。
カメラに対するニーズを大まかにセグメントしてみる。
1.銀塩写真(フィルムカメラ)にこだわっているマニアな人。
2.本格的な一眼かコンパクトかはともかくとして、デジタルカメラを持ち歩く人。
3.携帯カメラで済ます人。
4.「写ルンです」などのレンズ付きフィルムを使う人。
5.そもそも写真を撮らない人。
以上でモレ抜けなく列挙できているだろうか。
この中で、使い切りの「エコデジカメ」のターゲットとなるのはどのセグメントだろうか。
1と2はまず除外だろう。
3はもしかすると、100万画素程度のカメラしか付いていない少し古い携帯のユーザーなら、ちょっときれいに写真を撮りたいと思った時に利用するかもしれない。
4はフィルムではなくデジカメに代替させることができれば、同じ感覚で利用する人もいるだろうか。
5はそもそも撮らないので望み薄だ。
可能性があるのは3と4。しかし、ど真ん中のターゲットがどうも見えてこない気がする。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。