「大学の都心回帰」に寄せる期待

2008.07.27

ライフ・ソーシャル

「大学の都心回帰」に寄せる期待

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

教員といっても1講座だけを担当する兼業の非常勤なのだが、今の大学で4年も担当していると大学関連のニュースには自然と目がいく。そんな中で、ちょっと気になり、期待したい記事があった。

「生き残りかけ都心回帰 東洋大、埼玉→文京区 帝京平成大、千葉→池袋」
http://mainichi.jp/life/edu/news/20080725dde012070054000c.html

<近年、大学が都心に戻ってきている。なぜ今、大学は都心回帰するのか。それを探るため、帝京平成大学と東洋大学の2校を取材した>とある。母校の東洋大も取材されたようだ。その母校の広報担当者の弁では都心に校舎を統一することで、教授の研究室と教室、先輩後輩の全学年が同じ場所に集まったため、教員と学生、先輩後輩の結びつきが強くなったとのことである。
筆者の学生時代は実に、東京の本校以外に埼玉県内の2カ所の校舎を行ったり来たりと大変な思いをしていたので、「今の世代は恵まれているな」と思ってしまう。しかし、実際にはそれが自然な姿なのだ。受験戦争が激しく、大学が拡大路線をひた走っていた時代は多くの学生を収容する広大なキャンパスを求めて地方に拡大していった。今日、少子高齢化・全入時代にいたり、「都心回帰」は大学が「そんな田舎に行きたくない」という、学生の根源的なニーズにも耳を傾けざるを得なくなった結果でもある。

せっかくの「都心回帰」なのだから、この環境をもう一歩進めて考えてみてはどうかとも思う。先の広報担当者は都心回帰の効用を「教員と学生同士の結びつき」と説明していたが、都心であれば、学内を離れた地域やそこを拠点にする企業との結びつきも強めることができるはずだ。確かに地方でも地域社会との結びつきはあっただろうが、例えば「産学協同」などはやはり都心の方がやりやすい。筆者のような学外の非常勤講師も協力しやすい。「教えるということは、学ぶことでもある」ので、できる限り協力したいが、本業をもった非常勤講師は長い移動時間は大敵だなのだ。環境は劇的に好転したといえるだろう。

地方都市にある新興の大学は全入時代で大変苦戦し、淘汰の時代を迎えている。その中おける生き残り・活性化の一つの手段が、「地元企業との連携」である。大学が地元企業に要請し、寄付講座を開く。地元企業が講師を派遣し、学生との関係を構築。地元学生も地元企業に関心を持ち、就職のきっかけとなる。大学と学生と企業のリレーションによるWin - Winが成立するという構図なのだ。しかし、そこで問題になるのは、やはり地元企業の数が少ない場合、その好循環を維持することが難しくなってしまうのである。

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コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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