つい最近、電通の大幅な売上ダウンが話題になった。悪いのは電通だけではない。2008年4?6月期・東京地区のテレビ広告費は前年同期比13%のマイナスとなっている。広告業界ではいま、ラジカルな地殻変動が起こっているのではないだろうか。
ネット広告が第三から第二のメディアになるとき
一昨年にはネット広告が雑誌広告を抜き、すでに第三のメディアとなっている。ネット広告の伸び率は、ここ3年で128%(05→06)、124%(06→07)。一方で新聞は低落傾向にあり、96%(05→06)、94%(06→07)となっている。
仮にネット広告が過去2年の平均伸び率(=125%)で伸び続け、新聞広告が同じ率で減り続けるとしたら、2009年には新聞とネットのポジションが逆転する。遅かれ早かれネット広告が新聞広告を抜きさるのは、ほぼ確定した未来と言えるのではないだろうか。
テレビ広告の衰退を示す不気味な数字
ただし、ネット広告がテレビ広告までを凌駕するかどうかは、まだ読めない。テレビも衰退傾向にあるとはいえ、前年対比でみればほぼ99%ぐらいになんとか踏みとどまっている。ここは広告代理店各社にとっても、絶対に譲れない収益源である。あの手この手で何とかスポンサーを説得してでも、テレビ広告費だけは死守しようとするだろう。
しかし、それでテレビ広告を現状維持できるかどうかは非常に危ういのではないか。テレビに忍び寄る危機を象徴的に示した一例が、電通の売上高の激減だろう。9月度の単体売上高を前年同月比でみると、テレビ85.7%、新聞85.9%、雑誌85.2%と軒並み15%ものダウンとなっている。
「オリンピック効果の後だから」とビジョナリー・中村修治氏のエントリーにもあるが、本当にそれだけなのだろうか。
可処分時間の奪い合い
そもそもテレビ広告は、テレビを見る人がいて初めて広告として成立する。ということはテレビを見る人が減れば、その広告媒体としての価値も下がるだろう。ここで、読者の皆さんにもお聞きしたいことが二つある。一つはいま一日のうちでどれぐらいの時間テレビを見ているか、もう一つはテレビ視聴時間の経年変化だ。
ごくおおざっぱな推測に過ぎないが、平均視聴時間は長くても1時間ぐらい、そして年を経るごとにテレビを見る時間は減っているのでないだろうか。そう考える理由は、やはり時間こそが誰にとってももっとも貴重なリソースだという考え方が広がっているから。およそ最近の自己啓発系ベストセラーはすべて、いかに時間を効率的に使うかということがテーマになっている。
逆にいうとそれぐらい意識して、自覚的に使わないと時間を浪費させる娯楽や情報が溢れかえっているということでもある。そうなってくると、たとえばドラマのように連続的・線形的に時間を強制的に使わされるメディアに対する評価が下がっていくのはやむを得ない。
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