市場環境の変化に対応する「スピード経営」を どのようにして構築するか、CRMの視点から考えます。
商取引と言うものが本格的に発達してきたのは「工業化社会」以降、
いわゆる「マス・プロダクト」が可能になった時代からです。
「マス・プロダクト」と「マス・コミュニケーション」が商取引の両輪となって、
そのスピードを加速してきたわけですが、この時代から「情報の流れ」と
「商品(決済)の流れ」のスピードに差が生じ、その「差」を利用して、
多くの新たなビジネスも誕生してきました。
さらに近年インターネットの時代へ突入し、「スピードのギャップ」に加え、
「双方向性の拡大」というもうひとつの大きな変化が生まれました。
この「スピード」と「双方向性」が、一連の金融危機も含め、ビジネスの
あり方を根底から揺るがしているのが現在だと言えます。
(余談ですが、デリバティブなどという金融工学商品も、「スピード」と
「双方向性」ゆえに急速に増殖したのではないかと思います。)
こうしたスピードのギャップは、組織の意思決定にも影響を与えています。
コミュニケーションは、組織外部(=顧客)を対象にするものと組織内部を
対象にするものとに大別できますが、顧客を対象にしたコミュニケーション
手段が発達する速度に比較すると、組織内部へのそれはいかにも遅鈍です。
LAN等の通信インフラは整備されたものの、その通信速度ほどには、
組織の意思決定のスピードが上がっていないように思えます。
なぜでしょうか?
内部の情報インフラの構造と意思決定の構造がシンクロしていないからです。
これまでの企業経営は、ほとんどの場合一部のマネジメント層が損益計算書や
貸借対照表などの「分析指標」を解釈し、縦割り組織を使って現場に指示を
出してきました。しかし、情報の伝達速度や双方向性が拡大するに従って、
流通する情報の量も種類も、まさに爆発的に拡大しています。もはや、一部の
マネジメント層だけでリアルタイムに「分析」することは難しくなっている
のです。
それにも拘らず、パートやアルバイトという「非正規雇用労働力」の増加に
伴い、現場はますます「判断をしない」構造になってきています。
消費者が、何を買うかを決めて来店する割合(入店時購買決定率)は、2割
以下というデータがあります。消費者は、「何を買うか」というアイテム・レベル
までの意思決定をして買物をしているわけではないということです。
ということは、「結果」から「行動」への変化要因を推測するしかありません。
顧客が残した購買履歴は、顧客からの貴重な「メッセージ」なのです。
顧客の購買動機が隠された「データの文脈」をより速く、より正確に読みとる
ことが、精度の高い仮説を生み出す重要なカギになるはずです。
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