「東京ばな奈」の売れ続けるヒミツはなんだ?

2008.12.06

営業・マーケティング

「東京ばな奈」の売れ続けるヒミツはなんだ?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

「最後尾はこちら」のプラカードが掲げられている。ディズニーランドではない。東京駅のコンコースの真ん中。お土産売り場だ。並んでいる人々の目当ては「東京ばな奈」。

ちなみに、ここまで書いて驚くのは、この原稿は一太郎で書いているのだが、変換はATOKが動いている。何と、「とうきょうばなな」と入力すると、一発で「東京ばな奈」と変換される。それくらいもはや全国区でメジャーな存在となっているのか、東京ばな奈。

・・・話を元に戻そう。
景気が大きく後退している今日、人が列をなして買いに行く店などごく限られている。少し前なら、銀座、原宿と続けて出店し連日長蛇の列を作ったアパレルのH&Mか、忽然と表参道、渋谷に現れた黒船バーガーを装ったクォーターパウンダー(実はマクドナルド)かというところ。
しかし、「東京ばな奈」は最近話題だということではない。発売は1991年。年間売上げは40億円を誇るという。
この秋に実施されたインターネット調査gooランキング<旅行のときに買って行きたい、東京駅ナカお土産ランキング>でも、ダントツの一位を獲得し、「もはや東京土産の定番」と評価を得ている。
http://ranking.goo.ne.jp/ranking/013/ekinaka_present/

しかし、自分用の菓子に千円も二千円も払うことはそうないだろうに、土産と思うと、かくも列をなして買うのはなぜだろう。主力商品の東京ばな奈「見ぃつけたっ」は、8個入りで1,000円、16個入りで2,000円。1個125円の計算になる。

土産の用途とは何だろうか。大別すれば、お土産を「大切なあのひとにあげたいな」と思う「ピュア土産」。お客さんや深い付き合いのない知人ではあるけど、見下されたくな い相手への「見栄土産」。何もなしでは格好つかないから仕方なく持つ「義理土産」。そんなところだろうか。
東京ばな奈に列をなす人々は老若男女、家族連れ、カップル、出張客などなど、種々雑多。その人々が様々な理由で求めていくのが「東京ばな奈」なのだ。
東京土産としての「東京」を明確に主張するネーミング。1つあたり125円という、安すぎず高すぎない価格。そして、主力の「見ぃつけたっ」だけではなく様々に展開された派生商品のバリエーションも魅力なのだろう。

ウィキペディア(Wikipedia)の東京ばな奈の項には<老若男女誰にでも喜ばれる味ということでバナナが採用された>とある。
マーケティング的に考えれば、ターゲティングが明確でない「老若男女誰にでも喜ばれる」ような商品はなかなか売れないように考えられる。しかし、年間40億円。列をなす人々が現実にいるのだ。

万人受けする味と、絶妙なネーミングとプライシングが、「ピュア土産」「見栄土産」「義理土産」という購入動機のいずれにも適合した妙といえるのだろう。
「最大公約数的な商品は売れない」とつい考えがちだが、その反証の事例が目の前にあることにも注目すべきだと、土産売り場で少し学んだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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