手帳の高橋とED治療薬の相似点?

2008.12.11

営業・マーケティング

手帳の高橋とED治療薬の相似点?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

手帳の広告が気になる。オモロイ。しかし、それはどこかで見た展開・・・。

文房具、カッコヨク言えばステーショナリーマニアである。ちなみに、文房具屋の孫息子でもある。ヒマなときは文具の老舗・銀座伊東屋を訪れる。
しかし、今の時期、あまりの混雑で近寄れない売り場があるのだ。手帳売り場。商品棚にも人垣ができ、レジは長蛇の列。ちょっとパスしてしまう。もとより、筆者は青山学院大学が支給してくれる教員手帳を愛用しているので、手帳自体はここ5年ほど買ったことはないのだが・・・。
ただ、問題は教員手帳は4月始まりなので、世間様と少々季節・時間感覚がズレがちになる。普通の手帳に替えようかなとも思う。書店に行くと、手帳売り場が師走には設けられる。そこで必ず目にするのが「高橋書店の手帳」だ。
日記・手帳・家計簿・カレンダー・暦の書店シェア41.3%と圧倒的な強さを誇っている。

「手帳は高橋」。駅広告やテレビコマーシャルの大量投下をしているが、その内容が凄まじいことになっている。

何を主張してるかと言えば、『2009年高橋は、大サービス!「来年はGW5連休」』『2009年の高橋は、大サービス!「秋も五連休」』。

・・・ちょっと待て。別に高橋がサービスして平日を赤く染めた訳じゃない。日本中の手帳、春と秋は全国的に5連休だ。
なのに「大サービス」と言いきるあたり、むちゃくちゃな自信だ。
なぜって、肝心の「手帳の性能」について高橋は全く言及していないのだ。自社の手帳については絶対的な自信があるからだろう。

テレビコマーシャルはもっとすごい。
<今年のコマーシャルは”あの曲”で手帳が踊ります>
http://www.takahashishoten.co.jp/takahashishoten_cm/index.html (広告画像・動画あり)

衝撃壱
古めのアヤヤ。「なぜ?いまこの曲?」と興味をそそり、Attention獲得。

衝撃弐
踊る手帳。「なぜ?手帳が?」と釘付け。Interest獲得。

衝撃参
「大サービス、5連休」
いや、確実に高橋のサービスじゃねぇ! と突っ込みながらも、そんなすてきな休日いっぱいな手帳、是非欲しい!とDesire獲得。

そして「手帳は高橋」とコール、もうわすれられない。Memory。

消費者の購買行動への態度変容を表わす「AIDMA」。Actionの 一歩出前迄揺さぶられてしまう。恐らく、書店で目にしたら少なくとも手に取るだろう。

しかし、「日本中の手帳、春と秋は全国的に5連休」なのに、なぜ、高橋はこんな主張をするのか。それは、圧倒的シェアを誇る「リーダーの戦略」である「需要創造策」に他ならない。
売り場に行かせ、手に取り、買わせれば、そのシェアのパーセンテージ通り自社の商品が売れるのだ。需要自体が伸びれば伸びるほど、売上げは自社が一番伸びる。

おかしな例だが、かつてファイザー製薬がED治療薬「バイアグラ」の増販のため、「疾病啓発広告」を大々的に行った。「こんなあなたはEDかも。ぜひ病院へ」と。病院に行きさえすれば、自社の薬が処方されるというわけだ。
現在、バイエル社が「レトビラ」、イーライリリー社が「シアリス」という新薬を上市しているがまだまだ寡占市場故、各社ともインターネットを中心に広告を積極展開している。

手帳とED治療薬、一見何の関係もないものだが、高シェアを誇るリーダー企業や寡占企業の「需要創造策」。そんな展開もあると思うと、広告もまた、新しい興味で見られるのではないだろうか。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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