M&Aを利用した節税方法

2008.12.13

経営・マネジメント

M&Aを利用した節税方法

佐武 伸
株式会社サンベルトパートナーズ 代表取締役

赤字をもっている同業者を買収し共同事業を行う場合、 一定条件の下で節税が可能になります。

M&Aと税務の仕事をしていますと、経営者の方からよくこのようなご相談を受けます。

「M&Aで税金が安くなる方法はないでしょうか」

M&Aで税負担を軽減できる方法の1つとして、「繰越欠損金の引継ぎ」があります。どのような方法かといいますと、黒字の買い手企業が、繰越欠損金を持っている売り手企業を買収して、その繰越欠損金を引き継ぎ、引き継いだ繰越欠損金とその後生じた所得を相殺して税負担が軽くするといったものです。

まず前提として、企業は法人税を納めなければなりませんが、税金計算上の利益(「所得」といいます)がマイナスになった場合(「赤字」といいます)は、納税する必要はありません。この赤字は税法では欠損金といいます。この欠損金は、最大7年間繰り越せます。

ただし、注意しなければいけない点は、M&Aで繰越欠損金を持っている企業を買収するときには、税務上、この繰越欠損金の引継ぎや使用に一定の制限があるということです。

どのような場合に、繰越欠損金の引継ぎが可能なのかといいますと、まずM&Aで100%株式を取得し、完全子会社にする場合です。また株式の50%超を取得して子会社にして、その子会社の従業員の8割以上の雇用を維持する場合も可能です。

しかし、このような場合でも、売上高、従業員数、資本金の額等の規模の割合が、買い手企業の5分の1以上でなければ繰越欠損金の引継ぎができないという制限があります。

なぜ、このような制限があるのかといいますと、繰越欠損金をもっている小規模な赤字企業を、税負担軽減のためだけに買収するという租税回避行為を防止するためです。この制限がなければ、極端な例でいいますと、繰越欠損金が溜まってる休眠会社を買収しても税負担の軽減ができてしまうことになります。買収を利用してほとんどタダで税負担を軽減できてしまうわけですから、やはり税制上は制限が入ってしまうわけです。

なお、繰越欠損金の引継ぎの制限の取扱いは、かなり複雑かつ高度な税務上の判断を要する場合が多いので、必ず顧問税理士に相談する必要があります。繰越欠損金は、金額も大きく税金だけでなく、経営に与える影響も大きいことから、もし顧問税理士が組織再編税制に詳しくないと思われる場合には、セカンドオピニオンとして他の税理士等に相談してみることも検討する必要があるものと考えられます。

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佐武 伸

佐武 伸

株式会社サンベルトパートナーズ 代表取締役

中小企業M&Aの専門会社です。仲介業、財務調査、企業価値算定等のサービスを完全成功報酬体系でワンストップで提供させていただきます。 URL: http://www.sunbeltpartners.co.jp/

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