景気の低迷は家計を圧迫し、生活者は生活防衛のため財布の紐を固く締めるようになった。そんな時代に売れる商品とはどんなモノだろうか。
不景気は消費の低迷をもたらし、不要不急の消費は控えられ、商品の選択基準はより厳しいものになっている。そんな中で贅沢消費はまっ先に棄却される。年末年始の旅行者数の減少などが如実に物語っている。その次に来るのは嗜好品の買い控えで、そして、最後に来るのは食料品をはじめとした生活必需品の低価格帯への移行だ。大手流通のプライベートブランドが隆盛を誇っているのもその現れだといっていいだろう。
そんな中で、生活者にアピールすべく製品特性を大きく極端に振った商品を広告やニュースリリースの中で見つけた。
まず、気になった商品はカップ麺「日清・味の二重奏Wホワイト濃厚とんこつ麺」。1月26日発売だという。昨今のラーメンの流行は「2つの素材で仕上げるWテイスト」だというが、そのトレンドを巧みにとらえた同商品の価格は税別235円。カップメントしては高価格帯狙いだ。
カップ麺の生活者が妥当と考える価格、つまり「カスタマーバリュー」は100円だ。昨年、日清のカップヌードルが原材料の高騰を受け値上げをし、店頭小売価格が100円を超えた翌月に、値上げ前比-56%の売上げになったのは記憶に新しい。そのカスタマーバリューに適合するように、プライベートブランドは見事に88円~98円の価格帯で商品を販売している。もはや価格勝負では、メーカーは独自商品を維持できない。「Wホワイト濃厚とんこつ麺」はフツーのカップ麺が設定している倍以上の価格を付け、プライベートブランドのどちらかといえば万人受けするあっさり味に対し、「特濃」という切り口で独自の魅力をアピールしているのだ。
「濃い味」で勝負に出た商品を、飲料でも見つけた。「不二家・ネクター濃い果汁 白桃」。同じく1月26日発売だ。国産の白桃を丸ごと裏ごししたピューレを40%も使い、「本物の桃を食べているような、濃く果肉感のあるのどごし」が特徴だという。290g入りの小型ペットボトル入りで税別147円。これもまた、量と価格のバランスでいえば少々割高の商品を、いままでにない製品特性をアピールして購入させようという戦略だろう。
そもそも、果汁ジュースは高度成長期以降、果実の栄養を重視し、100%ジュースが珍重されたが、一昔前に「なっちゃん」が火を付けた低果汁ジュースブームによって嗜好品としてのポジションに移行している。嗜好品であれば、買い控えの今日においては、より強烈なアピールが求められる。低果汁のほんのりとした味わいでなく、果物そのもののような充実感で勝負するということだろう。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。