ネット時代における
ネーミングの立場

2009.02.23

営業・マーケティング

ネット時代における ネーミングの立場

弓削 徹

インターネット時代を迎えて、ネーミングは立ち位置を大きく変えました。購買意向を持つ顧客が、“聞き覚えた”ネーミングを「検索」ワードとして入力し、商品を探すようになっているためです。

顧客のインターネット利用を想定するとき、表記ゆれは大きな問題となります。たとえば、豚肉のブランドに「TOKYO X」というものがありますが、耳だけで聞いた場合、「東京エックス」なのか「トーキョーX」か「Tokyo X」か、わかりません。ネットでユーザーを誘引する際、あらゆる組み合わせのキーワード広告を購入しなければならないのではシャレになりません。

もっとも、メジャー・ブランドになれば、検索エンジンが「もしかして……?」と訊いてきてくれます。同様に、キヤノンとキャノン、キユーピーとキューピー程度の揺れ(いずれも前者が正式)は進化した検索エンジンが吸収してくれるでしょう。

さらに、商品・サービスや会社名のネーミング同様、ドメイン名も重要になってきました。

ドメイン名とは、ウェブサイトのURL(住所)ですね。このドメイン名に関しても、登録商標に準ずる保護が行われます。

ところで、googleやyahoo!検索を経由してウェブサイトにたどり着くことが一般的なルートであるなら、覚えやすく、入力しやすいドメイン名の価値はさほど高くないようにも見えます。しかし、ビジネス全体のブランド戦略を考えるとき、やはり理性的に統一されているべきだといえるでしょう。

このドメイン名について、インターネット重視である米国では、2009年1月に「fly.com」というドメイン名が旅行情報サービスの会社によって180万ドル(1億6000万円強)で買収されました。

もう少しさかのぼれば、「business.com」という、お仕事にもってこいのドメイン名が、なんと3億4500万ドル(約314億円)で売買されたことすらあります。

ここまで来ると、ネーミング、ドメイン売買の価値基準がインフレ化していることが見てとれますね。

たとえば、いま経営が懸念されている米国銀行の一つにバンク・オブ・アメリカがありますが、同行はマイナーな銀行に過ぎなかったのに、「全米一」にふさわしい行名であることに目をつけた他のメガバンクが、銀行本体ごと買収して巨大化してきた過去があります。

また、さかんにテレビCMを打ちながら破たんしてしまった“ライブ・ドア”を、無名の会社(オン・ザ・エッジ)が買収して社名をいかし、知名度も引き継いだというケースもありましたね。

いわば、ネーミングもドメインも、名が体を表すように「ネーミング(ドメイン名)がビジネスをつくる」というねじれ現象すら起きつつあるのです。

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