チームを車の前後輪にたとえると…前輪であるリーダーが発揮するのが「リーダーシップ」。しかし、これだけでは前に進みません。実は、後輪であるメンバー一人ひとりの「フォロワーシップ」がチームにとって欠かせないのです。
「では会議を終わります。お疲れ様でした!」
三々五々に席を立つメンバーたち。
「オグラさん、駅までお送りしますよ」
いつものように声をかけてくれた常務。その車中、今日の会議を振り返って常務に質問を投げかけました。
「会議で荒井課長(仮名)は一言も発しませんでしたが、あれで良かったのでしょうか?」
すると常務は、冗談めかして応えます。
「荒井課長は積極性が無い代わりに害も無い(笑)。だからまあ、いいか、と。(苦笑)」
私は思っていることを伝えるタイミングと感じ、言葉を発しました。
「これまではそれでも良かった。でも…そろそろ、それを卒業する頃ですね」。
不思議そうな表情でハンドルを握る常務。私はフォロワーシップの四類型について伝えることにしました。
フォロワーシップとはリーダーシップの対語で 、『部下心得』のようなもの。当社では部下のタイプを四つに分類しています。
一つ目の『アンチ・リーダー』は、上司への反発をアピールするタイプ。組織のNO2にありがちで、仕事ができる、という自負から、無意識に反発してしまいます。
二つ目は、リーダーの前とその他で明らかに態度が違う『ゴマすり』タイプ。リーダーが見ている時だけ積極的で、それ以外はやる気が無く、時にはリーダーの批判も行う八方美人です。
荒井課長がズバリ当てはまるのが三つ目の『傍観者』というタイプ。問題に無関心で自分の仕事を淡々とこなすのみ。周囲に影響を与える気概がなく、組織に黙って付いていくだけの存在です。
そして最後が「プロフェッショナル・フォロワー」という存在。自我を捨て、チームのために貢献すると決意し、上司の弱みを蔭で補い、強みを引き出すために上司の仕事を奪う、真のフォロワーです。
問題なのは、『アンチ・リーダー』や『ゴマすり』だけが目立ってしまい、「傍観者」が見過ごされること。
しかし、チームが高い目標を達成するためには、全ての問題ある行動を改め、全員がプロフェッショナル・フォロワーになる必要があります。『アンチ・リーダー』や『ゴマすり』だけに行動変革を求めるのではなく、目立たない『傍観者』にも同様の変革が必要なのです。
休日を楽しむだけの草野球なら、練習をさぼろうが、適当にやろうが、自由に任せればいい。しかし、甲子園での優勝を宿命づけられたチームでそれは許されません。
一人の緩みが全体を壊す…蟻の一穴になるのはマイナスの言動が目立つ『アンチ・リーダー』や『ゴマすり』だけでなく、全力を出さず周囲を気にしない『傍観者』にも同様のリスクが潜んでいるのです。
「でも、荒井課長の場合、性格だから治らないでしょう」
と諦め顔で語る常務に、私は答えます。
「そうかもしれません。しかし、要望することが大切です。そうでなくては必死にやっている他のメンバーへ対して失礼になる」
その言葉に無言で頷き、フロントガラスを睨む常務。その様子は『傍観者』を見過ごさない、強い組織へ向けた階段を、また一歩昇る強い決意が感じられました。
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2010.03.20
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