ニトリは家具のユニクロになれるか

2009.03.01

経営・マネジメント

ニトリは家具のユニクロになれるか

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

この激悪不況下にあって、今期で実に22期連続で増収増益決算となりそうな企業がある。家具のニトリである。北海道創業という地理的ハンデを抱えながらの成長要因は何だろうか。

家が売れなくても家具は売れる

新設住宅着工件数はこのところ毎月、前年対比約20%程度のマイナスで推移している。少なくとも新築の家は売れていないのだ。ところがニトリの主力製品である家具は売れている。一見不思議というかなにか矛盾しているようにさえ思える。

しかも日本で家具といえばすでに完全な飽和市場だろう。新たな需要が次から次へと生まれているとは考えにくい。実際、町の家具屋さんはどんどん潰れているのではないだろうか。普通に考えればこうなるわけだが、ここには一つ落とし穴がある。

おそらく家具に対する一定数の需要は必ずあるのだ。むしろ日本のように成熟したマーケットでは、家具に対しても固定需要があると考えた方がいいのかもしれない。家具は経年劣化する商品である。従って毎年必ず一定の買い替え需要は発生する。住宅数の増減には関係なく、コアな需要は確実に存在するのだろう。

ひたすらの安さが強烈な武器になる

需要があるとはいえ、競争もある。にもかかわらずニトリだけがほぼ独り勝ちしている理由は何か。かつてマーケティングの大家コトラー先生はその極意を次のように述べた。『理想のマーケティングとは、良い品をより安く提供することだ」と。ニトリ風にいうなら『お、ねだん以上』である。

そんなの当たり前である。とはいえ当たり前、必ずしも真ならず。当たり前のことを当たり前にできないのが人間の性であり、人間が運営する企業の常でもある。そこでニトリは自社独特の憲法を定めた。本部に張り出されている憲法には、次のように記されている。

1)安さ
2)安さ
3)安さ
4)適正な品質

お見事! 主婦モニターの声を参照しながら、顧客に「安い(=単純絶対価格的に安いのではなく、対価値相対的に安い)」と感じさせる価格設定が、ニトリマジックの根幹にあるのだ。

自社を製造小売ではなく製造「物流」小売と定義する

価格設定を「安く」抑えるためには、生産をコントロールしなければならない。ファッション業界ではユニクロが先鞭をつけたSPAモデル、つまり製造小売スタイルである。ニトリも製造をほぼ完璧に自社で統制している。

販売商品の実に7割近くが自社工場もしくは委託先工場で作った独自企画商品である。しかも委託先工場での原料調達にまで徹底的な最適化を図る。一つの商品についてもパーツの仕入れ先は中国から遠くチリまで及ぶ。生産をほぼ完全に自社のコントロール下に置くこと、すなわち商品価格をパーフェクトに管理することにつながる。

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