ユニクロが、若い女性向けの商品をそろえた新コンセプトの店舗を、「新宿マルイ カレン」に出店した。その陰にはユニクロと丸井の深い戦略があるように思える。
ユニクロと丸井とのコラボレーション店「ユニクロガールズ」は、<カレンは、「まるごと全館ファストファッションの館」をコンセプトとし、ユニクロを最も象徴的なブランドととらえている>と報道にあった。
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200902270017a.nwc
上記記事中では<矢野経済研究所の「アパレル産業白書2007」によると、日本の衣料品市場における女性向け売上比率は63.2%。これに対し、ユニクロは約40%と低い。これを早期に60%に引き上げ、米GAPやスウェーデンのヘネス&マウリッツ(H&M)など売上高1兆円超のグローバル大手と対抗していくため、同ショップを立ち上げた>とある。
他の報道でも、「ユニクロの「H&M対抗」と見る向きが多いようだ。確かに2010年に1兆円企業となることを目指しているユニクロとしてはいつかは戦わなければならない相手なのだろう。
今までもH&Mの日本進出に際して、同じ衣料品の製造小売りであるSPAという業態を取っているが故に「ユニクロV.s. H&M」と見る報道も多かった。しかし、実際にはSPAで低価格な衣料を提供しつつも、バリューラインを飛び出す提供価値の軸を「品質」におき、定番商品にこだわるユニクロは正確には「ファストファッション」ではない。一方、H&M価値の軸を、「ファッション性」におき、高回転で次々と新商品を展開する、まさに「ファストファッション」そのものの戦略だ。
つまり、今まで両者は戦っているようで戦っていないのが現実だった。それが、今回ユニクロが初めてガチンコの勝負を挑んだと見ることができる。
(参考バックナンバーへのリンク:「バリューライン」で考える、ユニクロとH&Mの戦い)
ユニクロのH&M対抗は、丸井の思惑とも一致している。H&Mの出店戦略を見ると、銀座、原宿に続いて今年7月渋谷に、そして今秋、新宿の伊勢丹本店向かいに出店予定だという。丸井はユニクロとのコラボレーションで一歩先に新宿でファストファッションの地盤を築いて迎え撃とうというところだろう。
さて、ここまでは公開情報の整理と若干の考察。
H&M対抗の話は上記の通りメディアも予測している範囲だが、ユニクロと丸井にはもう一つの秘めたる思惑があるように思われる。
H&Mや同じく人気SPAブランドのトップショップなど「ファストファッション」の得意技は「デザイナーコラボをリーズナブルに」だ。ユニクロはまだデザイナーコラボは発表していないが店作りは<クリエーティブディレクターの佐藤可士和さんがプロデュースを担当し、インテリアデザイナーの片山正通さんが店舗デザインを手掛けた>というから、早晩、服作りにも著名デザイナーが名前を並べるのではないだろうか。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。