栄枯盛衰が激しい時代においても、変わらず売れ続けている商品は存在する。その「定番商品」の売れ続けるヒミツとはなんだろうか。そして、その定番商品の代表格たる「正露丸」はどのような変化を遂げているのだろうか。
「定番商品」というと、どのようなものが思い浮かぶだろうか。筆者が講師を務めるマーケティング研修で「プロダクトライフサイクル」と関連して、定番商品、もしくはロングセラー商品の話題を出すと、受講者からは様々な商品名が飛び出す。
カップヌードル、ポッキー、コカ・コーラ・・・そう、食品や菓子、飲料には定番商品が多い。カローラ、広辞苑なんて名前も出てくる。では、それらの共通点とはなんだろうか。
カップヌードルは、いわゆる「カップヌードル」といわれる味の他に、様々な味のバリエーションを展開している。
ポッキーも基本の「ポッキーチョコレート」をはじめとして、ご当地ポッキーに至るまで、様々なバリエーションがある。
コカ・コーラもクラッシックは変わらぬ味だが、現在では「ゼロ」の方がむしろ主流となっているかもしれない。
カローラはその名前こそ継承されているが、1966年の登場以来10代のモデルチェンジと様々な派生車種を生んで、当然ながら原形は留めていない。
広辞苑は現在第6版となっているが、版を重ねる毎に新語を取り込み、刷新されている。
つまり、定番商品が長い歴史を生き残ってきたのは、時代や環境の変化、消費者の嗜好の変化や消費者のニーズに応じて、様々な進化をしてきたからであるといえる。
生き残りの秘密を説明するには、ダーウィンの『種の起原』における考え方が参考になろう。
<生物の進化は、すべての生物は変異を持ち、変異のうちの一部は親から子へ伝えられ、その変異の中には生存と繁殖に有利さをもたらす物がある><そして限られた資源を生物個体同士が争い、存在し続けるための努力を繰り返すことによって起こる自然選択によって引き起こされる>※
個体の変異によって多様性が生まれ、それが伝承されていく様は、商品がバリエーションを展開し、消費者に選択されてさらに多様に展開して生き残っていくのと似ているだろう。
しかし、全く変化が起こらない、一つの例外が存在すると筆者は考えていた。
「正露丸」。
割とよく知られた話もあるが、正露丸の歴史は実に興味深い。Wikipediaの記述を見るとなかなか楽しめるはずだ。
元々の名は「征露丸」。文字が違う。日露戦争の折り、「露西亜(ロシア)を征する」と軍の携行薬となったことを示している。諸説あるが、開発されたのは1902年とも1903年ともいわれている。実に100年以上が経っているのだ。
さて、一種異様な香りを放ち、それ故効き目を感じるこの薬、主成分の日局木クレオソート(木クレオソート)は、歯科用の鎮痛鎮静効果は認められているものの、主たる利用用途の止瀉薬としては完全にはその効果を現すメカニズムは解明されていないという。
なんだかわからないけれど、よく効く薬。それだけで、購入する理由はたっぷりなので、どの家庭にもひと瓶は薬箱に入っているだずだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。