「慈善」というキー・バイイング・ファクターを考える

2009.03.10

ライフ・ソーシャル

「慈善」というキー・バイイング・ファクターを考える

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

人はモノの購入を決断する時、必ず何らかの「理由」が存在する。理由の自覚がない衝動的な購入であったとしても、何らかそのモノに惹かれるポイントがあったはずなのだ。その「買う理由」を「KBF=Key Buying Factor」という。 今日は、これからKBFに加えたい一要素を考えてみよう。

先週、ある企業の研修で一人の受講者をふと見ると、そのシャツが気になった。・・・似ている。その赤いストライプの色や間隔、そしてボタンダウンの襟のボタンまで、筆者が着ているものとそっくりだった。聞いてみると、やはり、同じメーカーのものだった。ユニクロ製。

筆者の洋服や身の回りのモノのKBFはかなり特殊だといえるだろう。テーマカラーが「赤」なので、色にこだわり、デパートやショッピングセンターをふらふら歩いて、赤いモノに反応して即買いする。男性用でキレイな赤は少ないので、見つけた時は躊躇してはならない。それ故、値段やブランドはバラバラ。「赤くてキレイ」は唯一のKBFなのだ。
その意味からすると、高品質で安価という、コストパフォーマンスに優れ、特に赤の発色がいいユニクロは合理的なKBFを提供してくれるため、好きなブランドの一つとなっているなのだが、唯一覚悟しなくてはならないのが「人とかぶる」という点なのだ。人とファッションがかぶることを極度に嫌う方ではないし、「それと同じの買ってもいい?」と人の真似をしたこともある。しかし、冒頭のように初対面の人と出会い頭でかぶるのは、なんとなく気まずい。

さて、ここからが今日紹介したい本論だ。
むしろ人とかぶること、自分と同じモノを身に付けている人が確実にもう一人存在している。そして、それこそが価値であり、KBFになるという商品を見つけた。

<世界の子供に「おそろい」の靴をプレゼント!>
http://greenz.jp/2009/03/07/toms/

アメリカ・カリフォルニアの靴ブランドで「TOMS」というらしい。
<TOMSは、靴1足の売上につき世界の子供に靴1足を寄付することを企業ミッションとする「社会貢献するシューズメーカー」>であり、同社の靴を購入すると、自分とおそろいの靴を世界のどこかで一人の子供が履いていることになるという。

創業者が事業を立ち上げた経緯と、その事業のしくみが記事に記されている。
<南米・アルゼンチンを旅したブレイク(創業者)は、現地の子供たちが、貧困のため靴が買えず、裸足で生活している事実を知る。遠方まで裸足で生活用水を汲みに行く多くの子供たち。この現実に衝撃を受けたブレイクは、2006年5月にTOMSを設立。靴1足を売り上げるごとに1足の靴を世界の子供たちに寄付するという新しい事業を立ち上げた>。

その成果もめざましい。<事業開始以来3年足らずで、アルゼンチンの子供たちに1万足以上、南アフリカに5万足の靴をそれぞれ寄付。2009年1月にはエチオピアの子供たちにも3.7万足の靴を届けることができた>とのことだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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