「離職率」を下げる秘策はあるか?

2009.03.14

組織・人材

「離職率」を下げる秘策はあるか?

小倉 広

有名企業でもない限り、採用とは求職者を選ぶ場でなく、「選ばれる場」。 給与や福利厚生を訴えても、優秀な人材は採用できません。 入社後に本人が活躍できる環境も大切。 いくらキレイに見せかけても、 求職者は社内の状況を敏感に嗅ぎ取るもの。 採用力=企業力なのです。

「オグラさん。今、現場は人が足りなくてヒィヒィ言ってます」

プロジェクト会議終了後、営業部長が話しかけてきました。

「採用も大切だけど、相変わらず離職率がひどい。採用してもドンドン辞めていくから一向に楽にならない。どうすれば離職率が下がるんでしょう?」

すぐにピンと来た私は、あえて答えを教えずに部長に質問をすることに。

「なぜ人が辞めると思いますか?」

「うーん…。ウチはよそほど給料が高くないし、肉体的にもしんどいですからねぇ」

「ホントにそれだけでしょうか?」

意地悪に尋ねる私に、部長は答えます。

「え?どういう意味ですか?」

私は、かつて在籍していたリクルート社が調査した『離職者の退職理由データ』に基づいて解説することにしました。
それによると『建前』の退職理由では『キャリアアップ』が第一位。しかし『ホンネ』の理由第一位は、なんと『上司との人間関係』と出たのです。私は部長に、心当たりはないかと質問してみました。すると…。

「大いにあります」

離職率を下げる、という課題は従業員満足(Employee Satisfaction)の改善に直結します。つまり、あらゆる事柄を変えなくてはならない。
つまり、これだけを行えば離職率が下がる、といった魔法の秘策はないのです。
それらを踏まえた上で、あえて実効性の高い施策をあげるなら、上司と部下の人間関係=信頼関係の改善に力を注ぐことが最も効果的だと言えます。
しかし、これが一番難しい。なぜなら、信頼関係はスキルやテクニックで築くものではなく、上司力=人間力を高めるという壮大なテーマと深く繋がっているからです。

ただ、何事にも存在するものが『法則』。
もちろん、信頼関係の構築と崩壊にも法則が存在します。
我々フェイス総研の主力研修である『Faith(フェイス・信頼)』で定義された『信頼を築く自然法則』は全部で三つ。

一つ目は『相手を大切にする』。
二つ目には『自分を指さす』。
そして三つ目に『誠実である』…。

おそらく、これだけを聞けば、当たり前のことばかり、と思われるかもしれません。でも知っていることと実際の行動は大違い。多くの現場で、やってはいけないことが当然のようにまかり通っているのです。

「どこから手をつけたらいいんだろう…」

途方にくれる営業部長に、私はゆっくりと声をかけました。

「社内の信頼関係を一歩ずつ積み重ねましょう。Faith(フェイス)研修を使うもよし、研修抜きで上司部下が腹を割って話す場を作るのもよし。急がず時間をかけて大切なことを大切にしていきましょうよ」

一見、採用課題のような人不足の話題も、原因をたどれば信頼関係に行きつきました。組織問題と言われるものの原因が信頼関係にあることは決して少なくありません。その根本課題に辛抱強く向き合った組織だけが勝ち残るのです。この企業はその第一歩を踏み出しました。あなたの企業はどうですか?

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