「他人の不備は目に留まる…」 気にすればする程、募るはストレスばかり…。 そんなストレスの解消法。小さな一歩でスッキリさせましょう。
「オグラさん、営業部長がガンなんです」
職場の風通しを良くし、理念を浸透させるプロジェクト会議が終わった後のこと。
私たちコンサルタントを駅まで送り届ける車内で人事部長が続けます。
「見ておわかりの通り、営業部長が会議に出たとたん、誰も話せなくなる。
威圧感がすごいんです」
この言葉を皮切りに、これまであったさまざまな問題をあげつらいながら、
人事部長はため息をつきました。
「社長がもっとズバッと言ってくれればいいのに…」
そこから先は、社長とその弟にあたる専務に関する話。
私たちが駅へ到着するまでの小一時間、ほとんどがこれらの愚痴めいた批判に費やされようとしていました。
私は、どうしようかとためらいながらも、心の衝動に任せ、その話をさえぎることに。
「変えていきましょう。誰が変えてくれるのでもない。部長が変えるのです」
ハッとした表情の人事部長。しばらく無言の後、口を開きました。
「そうですね。それが僕の仕事だったはずなんです」
部長は何度か小さくうなずきながら、独り言のようにつぶやきました。
「過去を変えることはできないが未来は変えることができる」
「相手を変えることはできないが自分を変えることはできる」
これらは、組織変革プロジェクトを進める上での大原則。
だからこそ『過去の相手』に対して愚痴を言うのではなく、
『未来の自分』を変えることに集中しなければなりません。
その姿をプロジェクトメンバーが社員たちへ見せ続けることによって初めて、
会社が変わっていくのです。
しかし、頭で理解しているものの、実際には正反対の行動をしていることに
無自覚な人が多いのには驚かされるばかり。
私たちを駅まで送ってくれる親切な人事部長ですら、
同じ轍を踏んでいることにどうやら気付いていなかったようです。
お互いを批判し合う上司と部下、部署を超えてののしり合う営業と管理部・・・。
世の中のほとんどの組織で、このような光景が繰り広げられているのが現実です。
しかし、どんなに厳しい環境にあろうとも常に高業績を出し続けている素晴らしい組織に共通するのは、それとは正反対の組織風土。
「上司が部下に感謝し、部下の足りなさを自分ごととして反省する」
「部下が上司を尊敬し、上司の足りないところをこっそり陰で補う」
「営業は管理部のおかげだと感謝し、管理部は営業のおかげだと感謝する」
そういう組織を私たちはつくっていかなければならないのです。
言葉は思考を定義し、思考は行動を司るもの。私は人事部長を励ましながら、
プロジェクトメンバーの会話から変えていくことを提案しました。
じっとフロントガラスを睨みながら、部長が力強く答えます。
「僕が変える。僕達が変えていくんですよね」
私は彼の力強い目の奥に、この会社の明るい将来を見つけたような気がしました。
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2010.03.20
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