チャレンジャー企業は刮目せよ・サントリーの戦い方

2009.04.01

営業・マーケティング

チャレンジャー企業は刮目せよ・サントリーの戦い方

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

4月1日付で純粋持ち株会社に移行するサントリーは、新設する傘下の「サントリー食品」で飲料業界の勢力図を塗り替えるような戦略を展開するようだ。

<シェア奪取、まずは「ペプシ」で サントリー食品 攻めの新体制へ>
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200903310101a.nwc

記事はFujiSankei Business iだが、今年の1月20日に発表されたサントリー食品に関するニュースリリースの内容より、かなりアグレッシブな目標に切り替わっている。
http://www.suntory.co.jp/news/2009/10315.html

サントリーは飲料業界第2位。第1位は日本コカ・コーラだ。両社の飲料全体でのシェアはサントリーが20%なのに対し、日本コカ・コーラが30%以上と、サントリーは大きな差を開けられている。その巻き返しをコーラ市場から展開しようというのだ。
コーラ市場の中でも主戦場として選んでいるのは、ゼロカロリータイプのコーラ市場である。

サントリーは「ペプシネックス」と「ダイエットペプシ」の2商品を持っているが、昨年の時点では2商品合わせても<シェアは44%と日本コカ・コーラにわずかに後塵(こうじん)を拝した>という。それを2009年の<販売数量を13%増><シェアも47%に引き上げる計画>であり、さらに<国内シェアを早期に約20~30ポイント上昇の60~70%に引き上げる>という大胆さだ。そのため、3月24日にペプシネックスの味を改良し、リニューアル商品を上市している。
現在の飲料市場は、緑茶飲料市場が成熟~衰退期に入っており、炭酸飲料の成長が続いている。その原動力が「ゼロカロリー」なのだ。同じゼロカロリーであれば、お茶よりも味わいやすっきり感のある炭酸飲料を選択するという消費者の嗜好を反映したものだ。
その意味からすると、ゼロカロリーの炭酸飲料の象徴である、ゼロカロリータイプのコーラ市場を席巻するのは非常に意義が大きいといえるだろう。

そもそも、飲料業界においてサントリーが日本コカ・コーラに対して形勢不利な状況に陥っているのは、販売チャネルの問題が大きい。<日本コカ・コーラが、飲料販売の約4割を占める自動販売機を国内に80万~90万台擁するのに対し、サントリーは44万台と劣勢>という状況だ。
しかし、チャネルはマーケティングの4Pの中でも最も厄介な要素だ。なぜなら自社だけでコントロールすることが不可能で、構築に時間がかかる。自販機といえども簡単に設置することはできない。
サントリーはシェア奪取のために<販売促進や広告展開などの強化>をするとしている。CMもキャラクターとして、トータス松本、松山ケンイチ、山田優と豪華な3枚看板で、新しいペプシネックスを訴求している。自販機数で劣後するサントリーは広告でアピールし、消費者が目に付く数が多いコカ・コーラ ゼロを選ぶのではなく、ペプシネックスを指名買いさせる戦略なのだろう。
商品は広告を出せば売れるものではないのだが、こと、飲料の場合は広告の出稿量と売上げの相関性は高い。今後、需要期の夏に向けて、さらに広告攻勢は強化されていくことが予想される。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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