なかなか主体性を発揮してくれない部下。 上司としてあれこれ対応を変えてみるものの、なかなかを芽を出さず…。 もしかすると、あなたの取っている部下への対応はセオリーと真逆のことをしているかもしれません。 今のあなたの部下への接し方、自信ありますか?
「質問です!」質疑応答の場万で、元気よく手があがりました。ここはフェイス総研が主催する部下育成研修の場面。
「はい、ではA課長どうぞ!」
促す私にA課長は真剣な表情でこう切り出しました。
「部下のB主任のことで悩んでいます…」。
A課長の悩みとは、こうです。次期後継者候補としてA課長が最も目をかけているB主任。仕事もよくでき、やる気もトップクラス。しかし悩みの種は主体性が低いこと。
定型業務のようにやることが明確な仕事には指示が無くても積極的に動くのですが、本部との折衝なども苦手なのかA課長に任せっきりだというのです。
「どうやら不得意なことになると、知らん顔をしがちなのです…」。
A課長は物足りなさそうに話します。
私は部下育成で教えたばかりのキーワードをもとにA課長へ質問をしてみました。
「A課長、B主任へ対して「重圧」と「愛情」をたっぷりと注いでいますか?」
A課長は迷いなく即答しました。
「はい!人一倍、誰よりも多くの厳しさと愛情をB主任へ注いでいます!」と。
私は、謎が解けた、と思い、こう続けました。
「では、パワーバランスはどうですか?」と。
パワーバランス!謎が晴れた!という表情でA課長は大きくうなづきました。
人を育てる3つのP。これこそ私が提唱する人材育成に必須の3要素です。一つ目のPはプレッシャーつまり重圧です。人は厳しい山を越えて初めて成長します。簡単な仕事を数多くこなしても人は成長はしません。厳しい責任と重圧、それを乗り越えて初めて成長する。そのために上司は意図的に高いハードルを部下へ課さねばなりません。
しかし一方でそれだけでは優秀な部下も潰れてしまう。厳しさに耐えるだけの心のガソリンが必要なのです。それは、上司からのたっぷりと注がれる愛情、つまり2つ目のPすなわちパッションです。この愛情は先にあげた一つ目のPプレシャーと同等かそれ以上であることが必要。えてして私たちは「部下のため」を言い訳に愛情を少ししか与えず、プレッシャーだけを放り投げて自ら楽をしてしまいがちだからです。
そして重要なのが3つ目のPであるパワーバランス。これは上司と部下の間のパワー比率です。もしも上司のパワーが強すぎてあれこれ指示命令や口出しをし過ぎていたならば、部下のパワー比率は相対的に下がってしまい、成長することができない、という心理学の理論です。つまり上司と部下とでパワーの合計は常に一定、ということ。上司が強すぎおせっかいを焼きすぎる場合は部下はパワーを発揮する場が無くなり、成長できない。つまり部下が育たないのは口を出しすぎる上司のせい、ということなのです。
「オグラさん。謎が解けました」
A課長はスッキリとした顔でこうつぶやきました。
「B主任の問題だと思っていたけれど、原因は僕にあったんですね」。
なぜ、育たないんだ!と上司がイライラしている場合、ほとんどの場合原因は上司そのものにあります。
他人を指さすのではなく、自分を指さす。人材育成はそこから始まるのです。
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