「政策マーケティング」は真のソリューション提供を望む

2009.04.22

営業・マーケティング

「政策マーケティング」は真のソリューション提供を望む

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

<自民党は次期参議院選準備で、各選挙区で有権者がどのような政策を望んでいるかを分析する「政策マーケティング」という手法を導入する>という。

日本経済新聞4月19日号に総合・政治面の小さな囲み記事で報じられた。自民党の系列シンクタンクが全国300選挙区のうち、自民党候補が当落線上にあると見られる100の激戦区を調査。<治安や社会保障、中小企業支援、地元道路の渋滞問題など、各選挙区でどの政策項目に関心が高いか順位を付けする>ということだ。関心事が高いこと。つまり、有権者の「ニーズの把握」をしようということのようだ。

ニーズとは「理想とする状態と現状とのギャップ」を表わす。ニーズの把握、その掘り下げはマーケティングの最も重要なキモであるといっても過言ではない。そして、注意点は「ニーズ」と「ウォンツ」を取り違えないことである。

ニーズとウォンツ。その関係はハーバードビジネスレビューの元編集長であり、名論文「マーケティング近視眼」を記したセオドア・レビットの言葉がわかりやすい。
「顧客はドリルが欲しいのではない。穴を開けたいのだ」。
ニーズは「穴」。その人物は、何かネジでもねじ込みたいのが、目の前に穴が空いていて欲しいと考えている。「穴が空いている」それが理想とする状態。しかし、現状は「穴が空いていない」。なので、そのギャップとして「穴を開けたい」。それがニーズ。そして、ドリルはニーズを満たすための対象物だ。

ニーズとウォンツを取り違えるとどんな問題があるのか。自身が工具店主になったつもりで考えてみるといい。「ドリルをください」「はいどうぞ」では、顧客の本当に必要とするモノ、真のウォンツを提供できている保証はない。ニーズの掘り下げが必要だ。
何のために、どんな「穴」が必要なのか、工具店主として顧客に確認してみよう。「子供の工作を手伝いたい」と答えるかもしれない。だとしたら、大げさなドリルではなく、安価な「キリ」ぐらいでいいのではと提案できるだろう。「家の前の私道の修理」と答えるかもしれない。だとしたら、その顧客は何か勘違いをしているのだろう。ドリルで道路は直せない。道路工事用の機材が必要だ。店には機材はある。しかし、その顧客は年に何回その機械を使うだろうか。「3軒先に工務店があるから、そこに発注した方がいいですよ」とアドバイスできるだろう。

ITの世界ではよく使われる言葉、「ソリューション(Solution)」。日本語にすれば「問題解決」だ。問題解決策を提案し、それを実行するためにはニーズを把握し、掘り下げ、それを満たす適切なウォンツを見極めなくてはならない。
<治安や社会保障、中小企業支援、地元道路の渋滞問題>。政策の提言が明らかになっていないため、まだ判断はできないが、生活者のニーズがしっかりと掘り下げられていることを望む。諸問題に対する予算を付けるだけではソリューションにならない。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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