パソコンメーカー各社から「夏モデル」の発表が相次いでいる。注目は小型低価格の「ネットブック」と呼ばれるカテゴリーだろう。各社の戦略とその覚悟はいかなるものだろう。
<東芝、6万円の新ネットブック「dynabook UX」など夏パソコン発表>
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090419/1025573/
<富士通がネットブックを国内投入(略)>
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090419/1025574/
<シャープがネットブック参入(略)>
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090421/1025643/
各社の夏モデル発表において、ネットブックの投入が顕著になっている。しかも、驚くべきことに、それらの機種には各社のメインブランドの名前が冠されているのだ。例えば、東芝は自社のネットブックには、「NB100」という名を付けて販売していた。それが、「dynabook」ブランドを初めてネットブックに付けたのだ。富士通も海外だけで展開していたネットブックを国内市場に投入。メインブランドの「FMV-BIBLO」を付けた。シャープは約1年間沈黙を守っていた「Mebius」を投入。それが、ネットブックの形で現れるとは多くの人は予想していなかっただろう。
メインブランドをネットブックに付けるということはどういうことか。確かに国内においてもネットブック市場は伸長している。一方で各社の競争は激化し、価格は5万円が目安である。確かに売れる。しかし、価格は安い。となると、メインブランドのノートPCとの価格差は非常に大きくなる。折しも不景気の影響で財布の紐は固くなっている。買い換えを考えていたユーザーが「こっちでもいいか!」と、同ブランドのネットブックを選択したら、自社内のカニバリ(喰い合い)が発生し、安い機種のシェアが伸びてしまうことになる。それを避けたいために、今までメインブランドを付けなかったり、ネットブックの投入を各社は見送ったりしてきたのだ。
PCが売れない。当面売れ行きが回復する気配はない。とすれば、売れているネットブックを売るしかない。
その売り方に、成功事例がチラつく。ソニーの「バイオtype p」だ。「軽い・小さい・美しい」というコピーで売り出し、小さいにもかかわらず、優れたキータッチと、非常に質感の高い美しい仕上げで、価格はネットブックとしては破格の9万円台後半を付けた。高い。でも、売れた。
もちろん、熱心なソニーファン、バイオファンが2台目以降のサブマシンとして購入した例もある。だが、あのバイオが9万円ならと、多くのファーストユーザーを取り込んだともいわれている。ヘビーユーザーにはCPUがAtomでは少々力不足かもしれないが、質感の良さはバイオの名に恥じない。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。