ミネラルウォーター市場の今後を占う

2009.04.25

営業・マーケティング

ミネラルウォーター市場の今後を占う

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

日本コカ・コーラが「おいしい+環境にいい」ミネラルウォーターを発売した。果たして、市場はどう反応するのか。

新製品は『い・ろ・は・す(I LOHAS)』という。ちょっと変わったネーミングの由来は、<「いろは歌」の最初の三文字>と<「LOHAS (ロハス)」を掛け合わせ>たもので、<国産の天然水であることを表現するとともに、消費者に対して環境への配慮が具体的な行動となるきっかけを提案>しているという。なんて深いんだ日本コカ・コーラ。
http://www.cocacola.co.jp/corporate/news/news_20090423.html

以下、Fuji Sankei Business iに、同商品の紹介記事として、その背景などがまとめられているので、それを見てみよう。
<日本コカ・コーラ、ミネラル水「い・ろ・は・す」>
http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200904240011a.nwc

日本のミネラルウォーター市場に構造的な変化が起こっている。日本ミネラルウォーター協会によると、市場全体の伸びは大幅鈍化。特に、輸送コストが転嫁され割高になっている輸入品が2桁の落ち込みを見せている。対して、10~30円安い国産品が微増しているという状況だ。
生活者が財布の紐を固くした影響はこんなところにも如実に表れている。つまり、ミネラルウォーター飲用者の、「輸入品にこだわる・こだわらない」というセグメントは崩壊傾向にあり、「価格の安さにこだわる・こだわらない」というセグメントの、「安さ志向」が増えているわけだ。
しかし、日本コカ・コーラは「安さ」を全く訴求していない。「い・ろ・は・す」の店頭価格は520ミリリットル入りで126円。価格だけならさらに安い商品もあるからだろう。

狙いは名前の通り「エコ」だ。売り物はその容器。重量が12グラムと国内最軽量であり、<従来の容器に比べ樹脂の使用量を4割減らしたことで、製造時の二酸化炭素(CO2)の排出量を一般家庭 600世帯弱分に相当する年3000トン削減できるという> 。また、キャップ、ラベルも極限までの軽量化を実現したとニュースリリースにある。
「ポカリスエット」のペナペナなペットボトルは18グラム。それが発売された時にも驚嘆したが、さらに軽い。しかも強度を十分確保しているという。なんという技術。

しかし、なぜかもう一つの重要なアピールポイントを前面に出していないのが気になる。
「いろは」で<国産の天然水であることを表現>しているなら、輸入品の「フィードマイレージ」について指摘すればいいのにと、筆者は思う。フィードマイレージとは、食料を輸送することによる環境負荷を量と距離をかけて数値化したものだ。そして、生産地から消費地までの距離が短い食料を選ぶことが提唱されている。水の場合は特に「ウォーターマイレージ」と呼ばれることもある。
うーん、いい訴求ポイントを考えてしまった。日本コカ・コーラに教えてあげようか。などと考えたが、ミネラルウォーターのシェアNo.1はサントリーの「天然水」。南アルプス、奥大山、阿蘇と、しっかり国産をアピール。定着している。ウォーターマイレージを言わないのは敵にも塩を送ることになるからだろうか。ちょっと穿ちすぎか?

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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