「私があの上司の部下になるなんて考えられない…」 異動の季節によく聞かれる言葉です。 チームワークは必要だけど人間関係でお互いいがみ合ってしまう職場。 そんな重たい職場の解決法。 これであなたのキャリアも見えてきます。
「私はAさんを課長として認めません」
きっぱり断言したB主任は、A課長の部署に属する部下。
上司を認めない、という彼の発言に、研修会場はどよめきました。
「互いが認めあってない現状で、二人が口をきくことはほとんどありません」
職場の問題を洗い出し、解決していくチームトラストという研修を行ったところ、A上司とB主任の人間関係が大きな問題点として浮き彫りになりました。
二人のトップがいがみあっているため、部署の雰囲気は最悪。
その影響で、業績にも陰りが見え始めています。
そんな状況を理解しているにもかかわらず、A課長とB主任は互いのせいにして、関係は改善されないまま。至急手を打つ必要があるようです。
「B主任の言うこともわかりますが…二人のとばっちりを受けている部下とお客様が一番かわいそうですね。どうすれば部署がよくなると思いますか?」
私の問いかけに、B主任は我が意を得たり、とばかりに答えます。
「A課長に交代してもらうしかないでしょ。でなければ、今までどおり僕は僕のやり方でスタッフたちと部署をまわすだけです」
私は彼の勘違いを正す必要を感じ、ある言葉を伝えることにしました。
「B主任、『フォロワーシップ』という言葉をご存知ですか?」
フォロワーシップとは、リーダーシップの対語にあたる言葉で、部下(フォロワー)の発揮すべき行動のあり方を指します。
『チーム目標達成のため、自己の好き嫌いを度外視して上司の弱みを陰で補い、強みを引き出すために積極的に雑務を引き受ける部下の行動スタイル』…我がフェイス総研では、フォロワーシップをこのように定義しています。
重要なのは「チーム目標達成のため」という点。みんなのために、個人の好き嫌いや意地を捨て、チームが最もよい状態になるよう貢献することこそが本来のフォロワーシップなのです。
現在のB主任はまさにこの対極。面と向かって上司を批判して、戦うその姿は一見、チームのために犠牲を払っている風に見えますが、それが何の役にも立っていないことは明らか。結局はチームを犠牲にして自分の意地を優先しているにすぎないのです。
因みにフェイス総研では、B主任のようなタイプを『アンチ・リーダー』と呼び、あってはならない部下の姿、その典型と位置付けています。
「じゃあ、僕だけが悪者で、A課長はお咎めなし、っていうことなんですか!」
声を荒げるB主任を、私は穏やかに諭しました。
「そんなことはありません。A課長のリーダーシップも大問題です。しかし、そんなことを言っても状況は何も変わらない。他人ではなく、自分を指差し、できることをやっていくのが真のリーダーなのです」
リーダーとはチーム目標達成のために自己を犠牲にして、全てを投げ出せる人のことを指します。しかし、フォロワーシップを発揮できない人はリーダーにはなれません。フォロワーシップの先にこそ、本当のリーダーシップがあるのです。
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