今年の採用は大変みたいです。折角採用した新人君をまかせた指導担当者はうまくやっているでしょうか?ある会社ではこんなことになっていました。
関西のある老舗メーカーでの話です。
その分野では業界ナンバーワンですが、一般的知名度は高くありません。
会社の雰囲気も家族的で、高卒の生産担当者と還暦近いベテランの
職人さんが肩を並べているような職場です。
この会社では新入社員一人に対し指導者が一人つき、1年間に渡り
公私共に相談に乗ったり、仕事を教えたりする制度があります。
今回はその指導者に対するEQを活用した研修を実施しました。
研修の最初に指導担当としての自分の気持ちを表す言葉を選んで
頂いたところ「楽しい、希望、前向き」と言うものの他に「気苦労、困惑、
あっけにとられる、怒り、あきらめ」という言葉もありました。
Aさんは生産現場一筋30年のベテラン職人さんです。
カタカナが出てきたり、細かい作業の指示が出ると理解に
時間がかかり、ツーテンポ遅れてしまいます。
この会社が素晴らしいのは同じグループになった若手や
中堅の社員がベテランさんを嫌がったり見下したりせず、それとなく
フォローをしているところです。この会社はそれほど大きくありません。
社員がお互いの居場所を認め合い、協調しながら成長してきた歴史
が伺えました。
そんなAさんは、私が他社事例では最近の新入社員は自分から相談する
ことは少なく、課題を抱え込んでしまい、そのストレスに耐え切れ
なくなったとき、急に会社に来なくなってしまうと言う話を
したところ、休憩時間中、目に涙をためて、「自分の職場にもそういう
若者が増えてきています。どうすれば心を開いてくれるのでしょう。」
と相談しに来てくれました。
Bさんは6年目の支店経理担当の女性です。
今年配属された女性新入社員とうまく行かず悩んでいました。
彼女いわく「その子は仕事する気がなく、いくら教えても同じ間違いをします。ただでさえ忙しいのに、もう話すのも嫌なんです!」
と強く相手を非難をしていました。
研修でロープレが終わった時、「新人役の人に、あなたは教えたこと
や頼んだことを相手が理解したのかを確認をしていないよ、と指摘され、
自分が教えたつもりになっていたのが分かりました。勝手にできないのを新人のせいにしていたんですね。EQ検査に出ていた自分の行動傾向がそのままロープレでも出ていてびっくりしましたが、自分を振り返る機会をもらえて本当によかったです。」と言ってくれました。
Cさんは強面の30代中堅社員です。
彼は高卒のたたき上げ。自分にも後輩にも厳しく、
仕事に打ち込む姿は頼もしさを感じさせます。
そんなCさんの研修最後の言葉は、「これまで相手をびびらせることが指導だと勘違いしていました。相手が怯えた目をすることが納得させたことだと思っていました。辞めてしまった人間は根性が無いと切り捨てていたことを反省します」というものでした。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
-
会員登録 (無料)
-
ログインはこちら
関連記事
2010.03.20
2015.12.13

横井 真人
産業能率大学 教授
個人と組織のパフォーマンス向上を研究。人の行動をスキル、知識、行動意識、感情能力、価値観等の要素に分解し、どの要素が行動に影響を与えているかの観点からパフォーマンスを分析。職場のコミュ二ケーション、リーダーシップ、チームビルディング、ファシリテーション、ソリューション営業、マーケティング等の具体的施策に視点を活用する。
