“動物園のようにワクワクする、みんなの炭酸飲料”がコンセプトだという「ZOOCE Sparkling フルーツパレード」。そこに隠された狙いを読み解く。
カラフルな色や模様で描かれた、数々の動物たちのシルエットが踊るパッケージ。発売日は4月28日。ズバリ、ゴールデンウィーク前日。春のレジャーのお供にということなのだろう。狙い澄ましたタイミングだ。
でも、誰に向けて?
「ZOOCE」(ズース)とは、「ZOO」と「Juice」を掛け合わせたネーミングだという。うーん、ダジャレのような、ダジャレにもなっていないようなネーミング。でも、なんだかかわいい。カラフルな動物がら。舌足らずの子供が「ジュース」とうまく発音できず、「ズース、ズース」と言っているかのような名前だ。
子供向け飲料なのか?と最初は考えた。
ネットの書き込みを見てみると、掲示板やブログでは女性の書き込みが多い。かわいいパッケージ。おいしいと高評価だ。女性をターゲットにしたのか?とも思った。
サントリーのニュースリリースを見てみると、冒頭に記したコンセプト、“動物園のようにワクワクする、みんなの炭酸飲料”との表記がある。「みんなの」だ。
なんというワイドレンジなターゲティング! マーケティングエクセレンスなサントリーにしては珍しい展開だと思う。
考えてみれば、飲料業界においてサントリーほどチャレンジャーのポジションにある企業はないだろう。
飲料業界第2位。現在、コーラ市場においては第1位の日本コカ・コーラを猛追中だが、サントリーのペプシは常にコークの後塵を拝してきた。
もう一つの戦場が昨夏から戦いに熾烈さを増したサイダー市場。ゼロカロリーコーラによって炭酸飲料が伸張し、その流れで緩やかに同じカロリーゼロの緑茶市場が下降。それが、飲料市場の大きなトレンドだといっていいだろう。
それにつられた形で炭酸カテゴリーにおいて、ゼロカロリーではないもののサイダーも急伸した。
サイダー市場の巨人は三ツ矢サイダー。アサヒ飲料である。発売以来125年。サイダー市場のシェアを60~70%握っているが、2004年に製品リニューアルをして以来、さらに毎年売上げを順調に伸ばしている。
もう一つがキリンビバレッジのキリンレモン。発売80年を迎えた昨年、同じく
製品リニューアルして、やはり売上げを大きく伸ばした。
そこに割って入ったのがサントリーである。
「ラッキーサイダー」。「思い通りにならない毎日に、”ラッキーな気分をくれる友達”」がコンセプトだといい、ターゲットは10代から20代。主に中・高校生が対象だという。
チャレンジャーの戦い方は「差別化」が基本だ。
キュウリ味やブルーハワイなどシビレるような味が記憶に新しい。それらの毎年投入されるペプシの「変わり種コーラ」も差別化戦略の一環である。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。