ブレンド茶飲料のシェア7割越えを握っているといわれる、日本コカ・コーラの「爽健美茶」。その強大な力を持つリーダーブランドがさらなる市場拡大策を展開し始めたようだ。
爽健美茶の発売元は日本コカ・コーラ。言わずと知れた飲料業界第一位のリーダー企業である。同社の力の源泉は自動販売機である。稼働台数86万台。第二位サントリーの41万台に倍以上の差をつけている。その自動販売機においても爽健美茶はジョージアブランドのコーヒー飲料や、コカ・コーラなどの炭酸飲料を上回る看板商品である。
しかし、自動販売機だけでなくコンビニエンスストアのカバレッジの広さも注目に値する。棚が確保できていないコンビニは日本中どこにもないと言われるほど。現在は、多くの店舗で昨年から発売された「爽健美茶五穀」と並んで2フェイスを確保している。ブレンド茶の元祖、「十六茶」がコンビニの店頭であまり姿を見ないのと対照的である。
ブレンド茶飲料を開拓した十六茶を爽健美茶が追い落としたのは、CMの力による所が大きい。なんでも広告をすればモノが売れるという考え方は大いなる間違いであるが、こと、飲料に関しては売れ行きと広告投下量、そのインパクトが確かに寄与する。「ハトムギ・玄米・月見草~」。商品名を聞いただけでフレーズが思い浮かぶ。秀逸なCMだ。
そのCMキャラクターに竹野内豊が加わった。男性キャラクターは過去、発売10周年の2003年に、伊藤英明が常盤貴子と恋人役で出演していたが、単体での登場は初だ。
歴代のキャラクターは「ピュアでクリアで美しい」系の女性たち。昨年から連投のモデル、杏などはその路線を踏襲しているといえるだろう。しかし、なぜに竹野内豊?
恐らく、日本コカコーラはターゲット拡大をしているのだ。7割越えのシェアを握るリーダーが、さらなる成長を目指すとしたらターゲット拡大しかない。爽健美茶はCMキャラクターたちにイメージされるように、女性層から強く支持されていた。
景気は低迷し、消費者の財布の紐が固く閉じられた結果、そのあおりは昼食代の節約に向かった。コンビニ弁当の売れ行きが伸び、さらにマイ弁当箱が売れ、手作り弁当愛用層も増えた。弁当男子もかなりの数に上るという。そんな中で、「女性向け」のイメージが固着したままでいたら、ターゲットが半分になってしまう。そんなもったいないことはできない。
ターゲットを拡大する際には一つのリスクがある。それは、既存ユーザーの支持を失うことだ。「爽健美茶はピュアでクリアで美しい女性向けだと思ってたのにぃ~」なんてことになれば、強固な支持基盤の崩壊によってシェアを失いかねない。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。