1990年代初めにピーター・センゲは、企業が生き残るためにはイノベーションを常態とするための姿勢が問われており、「学習する組織」を創る上げることが必要だと提唱しました。これは個人でも同じことがいえます。社会や組織に付加価値を提供し続けるために、私たちは常に「学習する個人」でいることが求められています。
1990年代初めにピーター・センゲは、企業が生き残るためにはイノベーションを常態とするための姿勢が問われており、「学習する組織」を創る上げることが必要だと提唱しました。
これは個人でも同じことがいえます。社会や組織に付加価値を提供し続けるために、私たちは常に「学習する個人」でいることが求められており、そのためには目の前で起きている事を新たな視点で見つめ、自分の中に「気づき」を創造し続けることが不可欠です。
そのために必要な2つの観点について少し考えてみたいと思います。
1つは自ら考えること、もう1つは他者との関係を通して気付きを得ることです。
1つ目の「自ら考える」とは、様々なことを客観的に捉え、過去の経験や知識にあてはめてしまわないことがポイントとなります。「自ら考える」の出発点は疑問を持つことであり、疑う力を失った瞬間に、人の発達は停滞し始めます。
例えば、一般的に大企業は多くのスキーマを持っており、疑わせないシステムを作り上げているといえます。スキーマとは、人がある事象を認知する際に新しい経験としてではなく、既に自分の持っている枠組みに照らし合わせてそれを解釈しようとするパターン化された認知の仕方を意味しています。その一例として、製造現場での品質管理活動などが考えられます。品質管理活動は、作業標準化の徹底を目的として、作業手順を社員に叩き込み、言われたことを100%遂行する人材を生み出す一方で、指示を仰ぐばかりで、自分で考えることができない人材を生み出す危険性があります。
人が無意識のうちに持つスキーマは全ての状況に対して活用可能なわけではありません。確かに現実に起こっていることを特定のスキーマと照らし合わせて考えることは、実行の容易さ、エネルギーの節約などをもたらします。しかし、そもそもスキーマによって問題に対処するということは各問題の類似点に焦点を当てることを基礎としてのみ可能なことであり、類似していない部分は意図せずして認識の外へ排除されてしまいがちです。スキーマによって、人は何を重視し何を是認すべきかを個々の事実を捉える前に決めてしまっているともいえます。スキーマに事実をあてはめるのではなく、スキーマや自分自身に対して疑う目を持ち続け、事実に応じて何を見て何を是認すべきかを決める事が求められます。
2つ目に考えなければならないことは、他者との関係を通して気付きを得ることです。人は他者からのフィードバックを受け入れ、深い内省をすることを通じて、新しい気づきを得ることができます。
しかし、人は組織の中で地位が高くなるにつれ、他者を上から見たり、評価的に捉えたりするようになったり、さらに経験を積み重ねるにつれて、自分の考え方に固執したり、できないこと・わからないことを排除しようとする防衛本能が働いてしまうものです。
他者との関係を通して学習するためには、自分自身の防衛心に気づき、それを是正したうえで、他者とオープンな関係を持つことが前提となります。他者のフィードバックを受け入れる際に、自己防衛心に大きな影響を与えるものの1つに、自己有能感と呼ばれる「自分が有能である」という感情があります。自分自身が有能であると感じられていない時に人は他者に対して攻撃的になるなど、他者の指摘に対して自分を守ろうとする意識が強く働くというものです。自己有能感が今どのような状態にあるかを常に把握し、「自分が有能である」と感じられていない時に防衛行動を取らないように自分自身をコントロールすることが重要となります。他者の指摘を受けた時に受容できているか、またその時に自分がどのような感情抱いているかをよく見つめること。これらによって、他者のフィードバックを受容し、自分自身では気付きにくい固定観念に捉われることなく、あるがままの事実や自分自身に気づいていく事ができるようになります。
社会はこれまでにないスピードで変化を続けています。変化に乗り遅れてから気付いたのでは間に合いません。若手社員であってもベテラン社員であっても、「学習する個人」であり続けることが求められていると考えます。
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