強みと個性は違う。 自身の強みを決めるのは自分ではなく、クライアントなのです。
◆価格優位性のない企業は価格競争するな
不況の波が広告業界にもどっと押し寄せてきたこともあり、今年に入りクリエイティブ業界もかなり厳しい事業環境になってきました。
多くの企業が広告予算を削減したことで、クリエイティブ業界に落ちる予算全体が小さくなり、その小さくなったパイを制作会社や広告代理店が奪い合う様相を呈してきたのです。
しかし、クリエイターという人種は腕一本で飯を食う「職人肌」の人が少なくないので、いきなり仕事を取ってこい・営業をしろと言われても、そう簡単にできるわけもありません。
とくに大口のクライアントからの発注に支えられていた「下請け構造」の制作会社などが、新規営業で苦戦しているようです。
新たに顧客を獲得するために、とても効果的でシンプルな選択肢は「価格を下げる」というものです。このご時世ですから、どの発注企業もコストにシビアになっています。だから価格優位性を持つことはアドバンテージになります。
事実、最近は価格ディスカウントによって受注を図ろうとしている制作会社が増えてきました。
ただし、人件費や仕入れ費用などを低コストで運用できる「ローコストオペレーション」が事業戦略として確立している制作会社、価格優位性が戦略として根付いている制作会社でない限り、価格優位性を保持し続けることは非常に困難です。
他社が下げれば自社も下げるといった「見積もり書」の書き換え合戦に乗っかっているだけでは、自社の首を絞めるだけで「百害あって一利無し」です。
一度下げた価格を再び値上げするということは、容易ではないのです。それに、見積もりと同じように社員の給料を下げることなどできないのですから。
その点をしっかりと認識しないと売上が上がるほど利益が減るという最悪の状態に陥ってしまいます。
つまり、短期的な売上を確保するために利益を削る競争は、負のスパイラルをつくりだすだけなのです。
◆差別化戦略は「強み」があってこそ
そのことがわかっている制作会社は、価格競争に巻き込まれずに受注を獲得するために「競合優位性」をアピールしています。
「ウチは他社よりも少々高いかもしれません。でもウチには他社にない、こんな特徴があるのです。だから他社よりも高いのです」
つまり「価格優位性」ではなく「差別化戦略」によって仕事と利益を獲得しようという狙いです。
この狙い自体は価格競争に巻き込まれないためにも正しい選択ですが、気をつけなければならないのが「何でも差別化すればいいものではない」ということ。
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