ホンダ・インサイト対トヨタ・プリウスの戦いが激化している。それもあり得ないぐらいの激しさで。
百獣の王ライオンはどんな獲物でも全力で斃すといわれるが、圧倒的な力を持つトヨタの、ホンダ・インサイト叩きは異様な様相を示してきた。
確かに、3代目プリウスの発売に先行して、ホンダ・インサイトは絶好調ともいえる受注状況になった。それに対し、トヨタの取った手段はまず、常識では考えられない手段であった。旧型となる2代目プリウスを40万円以上もの大幅値下げして販売を継続。さらには新型の3代目プリウスの最低価格を極めて低廉に設定した。
消費財などの場合は、大きなシェアを持つリーダー企業が、当該カテゴリーにチャレンジャーが参入してきた時、その出鼻をくじくため、発売のタイミングでキャンペーン的に値引きをすることはある。(注:飲料の場合の例示)しかし、一度購入してしまえば反復購入が望めない耐久消費財である自動車で、しかもキャンペーンなどではなく、定価を引き下げるというのは前代未聞だといえるだろう。それは、トヨタがホンダにハイブリッド車市場を一部たりとも明け渡す意志のない現れだ。
価格の問題だけではない。ダイヤモンドオンラインの記事は、トヨタの凄まじい意志が伝わってくる。
<業界騒然!ホンダ「インサイト」をコケにする トヨタ「プリウス」の容赦ない“比較戦略”>
http://diamond.jp/series/inside/09_06_05_001/
記事によると、5月18日にメディア向けに行われたプリウスの発表会において、寸劇と配付資料で、ホンダ・インサイトという明示はしないものの、明らかにそれとわかる内容でトヨタのハイブリッドとの比較を行ったというのだ。単純な比較ではない。露骨に、いかに自社のシステムが優れており、他方がダメダメであるかをコッテリたっぷり伝えたという。
比較広告は日本では馴染みがあまりないが、海外においては珍しいことではない。有名な例では、ペプシコがコカ・コーラとの比較を一般消費者に体験させ、それをCMにした「ペプシチャレンジ」。最近では、アップルコンピュータの「マックです。パソコンです。」のCMもその例だ。
しかし、上記の例はいずれも市場ポジションが下位のチャレンジャーが、上位のリーダーに挑んでいる。リーダーが下位のチャレンジャーを比較して、さらに徹底的に叩くということは、極めて異例だといっていいだろう。
記事には< 「あまりにもメッセージ性が強く、わかりやすい戦略。明らかにホンダはトヨタの“虎の尾”を踏んだということ」>と業界関係者のコメントを掲載している。あまりにも露骨なトヨタのホンダ叩きの真意はどこにあるのだろうか。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。