「緑茶風味コーラ」の背後に隠された特保を笑い飛ばす戦略?!

2009.06.08

営業・マーケティング

「緑茶風味コーラ」の背後に隠された特保を笑い飛ばす戦略?!

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

6月8日、日本コカ・コーラが緑茶風味・カテキン入りのコーラ「コカ・コーラ プラス カテキン」を発売した。リリースでは「スタイリッシュな女性のための」とあるが、狙いはどこにあるのだろうか。

「コカ・コーラ プラス カテキン」は1月に発売されたビタミンC配合の「ノーカロリー コカ・コーラ プラスビタミン」に続く「コカ・コーラ プラス」ブランドの第2弾である。リリースによると同ブランドは<毎日の生活にちょっとした“plus”を提供する、スタイリッシュな女性のための炭酸ブランド>というターゲットとポジショニングが与えられている。

飲料業界のトレンドは、ゼロカロリー炭酸ブーム以降、茶系飲料が縮小している一方で、茶の成分であるカテキンの効用には相変わらず高い支持が集まっている。そこで、茶とカテキンを切り離したニュータイプの飲料の登場が今後のトレンドとなると予想される。
この「コカ・コーラ プラス カテキン」もその一つであるが、先行して花王より「ヘルシアスパークリング」が先月発売されている。同製品はヘルシア緑茶という茶系飲料から、限りなく茶系飲料の風味を消し去り炭酸飲料としての属性を加えたものだ。

その意味からすると、コカ・コーラ プラス カテキンとヘルシアスパークリングは強力な競合関係であることがわかる。
ヘルシアスパークリングのターゲット層は明確に発表されていないが、メタボやらウエストやらウエイトやらが気になる人々であることは間違いない。キャラクターは、「ほしのあき」。筆者を含め男性にファンは多いが、「30歳過ぎてグラビアアイドルは凄い」と女性層、特に20代後半から30代女性の支持も高い。コカ・コーラ プラス カテキンのターゲットとかぶる。
コカ・コーラ プラス カテキンのターゲットも女性だけかといえば、そんなことはないだろう。そもそも、コーラ支持は男性の方が強いといわれている。炭酸好きもしかり。故に、コカ・コーラゼロも男性メインの広告展開を行ってきた。
ノーカロリー、もしくはローカロリーのカテキン入り炭酸飲料。健康と体型が気になる男女がターゲット。両製品は元々の茶系飲料と炭酸飲料というカテゴリーから相互に領空侵犯し、ライバル関係となっているのだ。

正確にいえば両製品には明確な違いがある。ヘルシアは特定保健用食品(特保)であり、コカ・コーラ プラスは特保の認可を受けていない。
日本コカ・コーラも2004年~2005年にかけて特保の認可を受けた商品をいくつか上市したが、現在は特保飲料は一つも製品ラインアップに加えていない。ここに、日本コカ・コーラの戦略の方向性が感じられる。

同社には厚労省に申請すれば特保の認可を受けられるのではないか?という商品がいくつもある。例えば、茶系飲料でいれば「一(はじめ)茶花」。お茶の花に含まれる「フローラテアサポニン」に注目し、花の抽出成分を配合。「毎日のウェイトサポートに」というポジショニング。CMでユーモラスなキャラクターを演じる、タレントの「キム兄」に代表されるメタボやらウエストやらウエイトやらが気になる人々がターゲット。しかし、特保は取得していない。
今回のコカ・コーラ プラス カテキンも、「カテキン配合・特保コーラ」というポジショニングだって取れたはずなのだ。話題にもなるだろう。しかし、それをしていない。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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