あなたは”思考のアウトソーシング”の罠にはまっていませんか?

2009.06.12

仕事術

あなたは”思考のアウトソーシング”の罠にはまっていませんか?

井上 卓哉

人は意識的か無意識的かは別として、ある一部の事柄については自ら考えることを放棄し、他者の思考に依存している。この現象を以下では“思考のアウトソーシング”と呼ぶ。思考のアウトソーシングは決して珍しいことではなく、人々が日常的に行っていることだが、いくつかの事例を通じて、そこに内在する問題と留意すべき点について考えてみたい。

あなたが自ら思考しているといえることはどれくらいあるだろうか。また、何を

自ら思考するものとして選択しているだろうか。

人は意識的か無意識的かは別として、ある一部の事柄については自ら考えること

を放棄し、他者の思考に依存している。

この現象を以下では“思考のアウトソーシング”と呼ぶ。思考のアウトソーシン

グは決して珍しいことではなく、人々が日常的に行っていることだが、いくつか

の事例を通じて、そこに内在する問題と留意すべき点について考えてみたい。
 

まずは多くの企業でよく見受けられる、役割志向や効率化・労力削減を目的と

して推進されてきた機能分化に関わる、思考のアウトソーシングを取り上げてみ

たい。

経営者が自社の生き残りをかけて、自社にはどのような経営課題があり、何を解

決すべきかなどについて考えることは当然といえる。では、その他の社員はどう

だろうか。多くの企業を訪問した際に違和感を覚えるのは、管理者クラスとやり

取りしていても彼らの興味の範囲が自身の担当業務や組織に限定されており、ビ

ジネスについて語ろうとしない、訊こうとしないということだ。どんな経営者も

所詮は数社の経営しか経験していない、まして現在のような世界的な不況時代を

乗り切った経験を持つ経営者はほとんどいない。そのような中で、管理職クラス

が自社の経営層の環境認識や打ち出される方針を鵜呑みにして、ただ粛々と自身

の担当業務を遂行しているだけでよいのだろうか。

 また、組織内における過剰な機能分化についても同様である。これはプレゼン

テーションする人とプレゼンテーション資料を作成する人が別々というレベルか

ら、経営企画部門が経営戦略を考えて経営者がその可否を判断するというものま

である。特に後者は、最近多くの組織で見受けられる構造だが、一部の経営者が

自身の機能を放棄している原因ともいえる。そのような企業では経営者と経営企

画部門が政治家と官僚のような関係性になってしまい、経営者自ら自社戦略やビ

ジネスについて考えるというよりも、企画スタッフの策定した基本案の不足や改

善点を見い出す思考(ベストなものを求めるより問題点を探しにいく思考)に陥

りやすい。
 

 次に一般的によく見受けられる例として、専門家といわれる人への思考のアウ

トソーシングについて取り上げてみたい。例えば、「行列のできる法律相談所」

という番組がある。この番組では、ある出来事を取り上げてそれが有罪か無罪か

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