大流行の様相を見せている「下取りセール」。その中でもユニクロの「全商品リサイクル活動」が飛び抜けて素晴らしい。
さすが日本経済新聞という流麗な文章だ。6月22日の朝刊コラム春秋はこう始まる。<百貨店にしても、スーパーマーケットにしても、消費者にモノを「売る」のが本来の仕事。そんな大手小売各社が今年、世に放ったヒット企画は、消費者からモノを「買う」ことだった。>下取りセールを「消費者からモノを買う」とは言い得て妙。
記事は6月18日に発表された日経MJ2009年上期ヒット商品番付の内容を指している。西大関に列せられたのは「下取りセール」。春秋に<不用になった服や靴、かばんに傘、布団、食器、家電製品などを店まで持参すると、現金や値引き券に交換してくれる>と書かれているとおり、まさに何でもありの様相を呈している。
ヒット商品番付に挙げられているのは、各社のビジネスにとって大いに貢献しているからに他ならない。<日本の家は狭く、モノであふれている。たんすの肥やしも多い。場所を空ければモノを買ってくれるはずとの読み>との指摘はまさにその通りで、各社ウハウハなのだ。
一方で批判の声も少なくない。需要喚起になるものの、まだ使える物をリサイクルの名の下に買い換えをさせるという、環境負荷に対してである。確かに、エコな家電、自動車への買い換えは長期的にはプラスにはなるかもしれないけれど、どうもエコな感じはしなくて、少なくとも筆者は気がひける。
春秋は<買い取った物は再利用や途上国などへの寄付に回ると聞けば、まだ使えるものを捨てる後ろめたさも和らぐ。捨てるときにあれこれ分別する手間も省けるとのおまけ付きだ。>という事例も紹介している。このパターンで出色なのがユニクロの「全商品リサイクル活動」なのだ。
ファーストリテイリングのCSRサイトにあるコンテンツ
http://www.fastretailing.com/jp/csr/environment/recycle.html
ユニクロのビジネスにおけるインパクトは、他社の「下取りセール」における意義と同じく、顧客にタンスの肥やしを整理させ、新しいものを購入させる効果だ。しかし、ユニクロにおいてはとりわけこの要素は重要なのだ。なぜなら、昨今のユニクロは品質向上が著しく、めったに衣類が伸びたり縮んだり、色落ちしないからだ。つまり、ずっと着られちゃう。そのあたりは基本的にワンシーズン使い捨てのファストファッションと一線を画しているといっていいだろう。
新しいのが欲しい。でも前のが着られちゃう。だから買えない。すっごいジレンマ。
顧客にとってはジレンマからの開放。ユニクロにとってはセールスの道が開けるという、素晴らしいソリューション。ユニクロは数を売ってなんぼのビジネスモデルなのだから。
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2009.02.10
2015.01.26
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。