『ドクロマーク』を『天使マーク』に変える

2009.06.30

組織・人材

『ドクロマーク』を『天使マーク』に変える

小倉 広

辛いこと、嫌なこと、自分には合わない、働いていても楽しくない…こう感じる瞬間はビジネス界において往々にしてあること。 ですが、何のために働いているのか、今の体験が今後何につながっていくのか。 そこに目を向けることでつらさを乗り越えられる。 「陽の当たる場所だけを見ていれば影は見えない。」 今回はビジョンを持つことについてご説明いたします。


「いつも暗い表情で大変そう。」

ある研修で、課長について述べられたコメントです。

「オグラさん、まさにこの通り。A課長はいつも表情が暗いんです。
『おまえ、課長なんだから暗い表情を表に出すな!』と言っているんですけどね。」

社長は、半ば諦め口調で語ります

本来であれば明るく前向きな雰囲気を率先して作るのが上司の仕事。
しかし、その上司自身が最も暗いオーラを発揮しているのは好ましい状態では
ありません。

「私はA課長をいつも叱っているんです。でも一向に直らない…
 オグラさん、お得意のコーチングならこんな時、どんな話し方をすべきなの
 でしょうか?」

社長からの問いかけに対して、私は『ドクロ』を『天使』に変える魔法の技に
ついて話すことにしました。

「社長、御社を高校野球に例えるとしたら…
 1.甲子園優勝、日本一を狙っているチーム
 2.県大会優勝を狙っているチーム
 3.県大会で一勝すれば満足するチーム
 のうちどれに当てはまりますか?」

ニヤリとして社長は即答しました。

「甲子園優勝はハナから目標にしていないんです。ウチは明らかに2.だ。
 県大会の優勝常連校を目指しています。現状はまだまだ、ですけどね。」

なんの迷いも無く語る社長。私は続けて質問しました。

「A課長も同じ思いの持ち主なのでしょうか?もしかたら、彼は
 『県大会で一勝すればいい』と思ってる、なんてことはありませんか?」

社長の自信に溢れた表情は崩れ去り、目にはサッと曇りがかかりました。

「なるほど…。そうかもしれない…」

監督は甲子園出場を当然と思い、早朝から深夜まで厳しい練習を課している。
しかし選手たちは草野球程度に楽しめればいいと考えていたとしたら…
選手が暗い表情になることは想像に難くありません。

ビジョン(具体的な未来像=目標)には2つの機能があります。

『夢を強く持つことで目標が叶う』 と
『夢と目標を強く意識すれば苦労を辛く感じなくなる』

という機能です。当社のある新米コンサルタントはいつも悩みながら仕事を
していました。どうしたらお客様にご満足いただける研修を提供できるのか…。

しかし彼はある日、社内研修をきっかけとして人生のビジョンを発見しました。
自分だけが持っている明るさと元気さで日本中を笑顔に変えるのが使命なんだと。

それから彼の表情は一変しました。どんなに辛い体験も、自分とってはビジョン
実現のための貴重な体験であると、自らに降りかかるさまざまな

『ドクロマーク』を『天使マーク』

へと変化させていったのです。

「陽の当たる場所だけを見ていれば影は見えない。」

我々経営者がすべき仕事は、暗い表情を叱ることではなく、社員一人一人と
一緒になって、彼らの太陽=ビジョンを見つけてあげること。
A課長の表情を明るく変えるためには、彼自身に夢を描かせてあげることが
大切なのです。

「部下のビジョンを見つけることが社長の仕事か…確かにそうですね。」

表情から曇りが消えた社長もまた、社長としてのビジョンを見つけたようです。

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