これも王者の生きる道・花王「スタイルフィット」のリニューアル

2009.07.01

営業・マーケティング

これも王者の生きる道・花王「スタイルフィット」のリニューアル

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

6月15日にリニューアル発売された花王の「スタイルフィット」。液体洗剤&柔軟仕上げ剤だ。その競争戦略を読み解いてみよう。

「シワなくキレイ 香りもキレイ」。リニューアル前から訴求ポイントは概ね一貫している。ターゲットは「しっかりママ」だったか。
旧CMでは、働きながら、小さな子供を育て、夜はご主人を洗濯を済ませて軽い運動をしながら待つという、若いしっかりママが描かれている。演じるは自らも結婚4年目・2歳児の母である渡辺満里奈だった。

リニューアルにおいて大きく変わったのは、CMがとにかく賑やかで派手になったこと。
BGMは東京スカパラダイスオーケストラ。キャラクターは、しっかりママ代表・渡辺満里奈に加えて、ステキな奥様代表・真木明子(真木蔵人夫人)、カワイイギャル代表(?)・柳原可奈子と強化体制を組み、若年層に引き下げている。
CMは「私スタイルで洗おう」をテーマとして、キャラクター3人の洗濯の様子と洗濯後の様子を伝えているが、共通のコピーでは「香りと肌触りこだわってますから」「シワなくキレイ 香りもキレイ」と、「香り」を強調していることがわかる。香りはベルガモット、ローズ、フランキンセンス。<リラックス効果の知られる3つのアロマエッセンスを配合>したという。
製品の特徴としては、製品パッケージが全面リニューアルされている。いかにも「洗剤!」という顔つきのパッケージがオシャレに大変身。<化粧品などの有名ブランドを手がけるフランスのデザイン事務所とのコラボレーション>だという。(同社ホームページより)。

さて、ターゲット年齢を微妙に引き下げて、「香り」を強調。さらにオシャレなパッケージに変身させた意図はどこにあるのだろうか。

「ダウニー」。
売り切れ続出のアメリカ製の柔軟仕上げ剤だ。ダウニーは、アメリカンな強烈な香りが乾いたあとも残り、乙女な香りが女子の間で話題になっている。楽天市場の売れ筋ランキングではトップ10に入っている。
日本ではこの「嫌になるほど残る香り」の商品は今までなかったが、そのインパクトで売れまくっているのだ。アメリカンな香りといえば少々ビビルものはあるが、ダウニーには全11種類の香りがあるという。その中から好みの香りを見つけ出すクチコミも人気に一役かっている。さらにクチコミ人気は女子中高生をから、奥様、ママ層にも拡大している。

さて、花王はこの「ダウニー人気」をゴッソリ奪い取るために、スタイルフィットをリニューアルさせたのだろうか。確かにリーダーの戦略の定石は、「同質化」。下位のポジションにある企業やブランドの商品で成功しているものを見つけ、優れた開発力によって同等の商品を作り上げ、強大な営業力によってチャネルにくまなく送り出して市場を席巻。競合商品を市場から閉め出す戦略である。
だとすると、「ダウニー危うし」なのか。「ダウニー、にげてー」。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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