丸美屋「納豆ごはん専用ふりかけ」のチャレンジ!

2009.07.09

営業・マーケティング

丸美屋「納豆ごはん専用ふりかけ」のチャレンジ!

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

昭和35年に「のりたま」を発売して以来、「”ふりかけ”といえば丸美屋」というポジションを獲得している同社だが、来月発売が予定されている新商品、「納豆ごはん専用ふりかけ」はかなりチャレンジな商品だ。

今回の商品に先駆けて、丸美屋は今年2月に「たまごかけごはん専用ふりかけ」を発売している。たまごかけごはんは2005年に行われた「たまごかけごはんシンポジウム」を機にブームがわき起こり、「たまごかけごはん専門店」も登場。岡山の専門店では年間7万食もの売上げを記録したとメディアが報じていた。ブームに乗って、全国各地で「たまごかけごはん専用醤油」も相次いで発売され、その数は優に50種を超えるといわれている。

たまごかけごはんブームは現在も続いており、専用醤油もさらに銘柄を増す中、丸美屋のチャレンジは、その専用醤油をふりかけで代替させようというものだった。同社ホームページの商品説明によれば、<醤油のかわりにまぜるだけ!>という使用方法が紹介され、明らかに「醤油ではなくふりかけで味付けを」という提案である。

今回の「納豆ご飯専用ふりかけ」は、先の「たまごかけごはん専用」の延長線上にあるかといえば、実は微妙に違う気がする。ビミョ~に。

丸美屋はふりかけ屋だ。(・・・と言い切ってしまっては他の商材もあるので失礼だが、一消費者として考えると、そう見えてしまう)。
白いご飯という大地が広がっていなければ、ふりかけの入り込む余地はない。たまごかけご飯がブームになった時には肝を冷やしたに違いない。何しろ、多くの人が、ふりかけではなく生玉子で白いご飯を覆い尽くしはじめたのだから。
しかし、幸いなことに前述の通り、ブームは専用醤油なるものを生み出すに至った。「醤油をふりかけで代替させる」というアイディアを思いつくのに時間がかかったのか、開発が大変だったのか、ブームから4年目にして発売された、「たまごかけごはん専用ふりかけ」は遅すぎるくらいである。

しかし、今度の「納豆ご飯専用ふりかけ」は先行商品の代替ではない。筆者は「納豆には醤油派」なのだが、多くの人は納豆に付属した専用タレを使用する。付属ではない専用タレも発売されているが、ごく少数しかない現状である。
つまり、「タダで付いているものを使わずに、明らかにコストがかかるものを使用させる」という、需要創造をしなくてはいけないのが今回のチャレンジなのだ。既にたまごかけご飯がブーム化しており、さらに先行して専用醤油が数多く発売されている状況と、納豆ご飯は状況が違う。
しかし、同社があえてチャレンジするのは、もうしばらくは続くと思われる不景気の影響で、食卓ではたまごかけや、納豆、ふりかけなどが多く使われるという商機を活かしたかったのであろう。たまごかけには対応した。あとは、納豆に奪われた白いご飯を、納豆の中に入り込むことによって、自社のビジネスの場としようという同社の執念を感じる。その執念は、プラスαのコストを消費者に納得させることができるだろうか。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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