何とも唐突感のあったサントリーとキリンの経営統合だが、その背景をじっくりと考えてみよう。そこからは「切羽詰まった」ということばしか浮かんでこないのではないか。
酒類大型再編
キリンは国内食品最大手、サントリーは2位。この両者が経営統合をめざす。まだ余談は許さないとはいえ、仮に実現すればどうなるのか。ビール、ウイスキー、ワイン、清涼飲料水などで断トツのガリバー企業が登場することになる。もしかしたら独占禁止法に引っ掛かるんじゃないかという懸念もあるぐらいだ。
2008年度の売上でみれば、両社あわせて約3兆8000億円。売上ベースでビールでは世界首位のアンハイザー・ブッシュ・インベブを上回る。食品メーカーの総合順位でも世界で第5位である。ビールメーカーなら日本でもほかにアサヒとサッポロがあるが、この二社がもし対抗合併してもまったく歯が立たない。
となればサントリー・キリン連合に入れてもらうか、あるいは海外メーカーと手を組むか。独自の生き残り策を考えるか。アサヒ、サッポロの経営陣は頭の痛いことだろう。
なぜ、いま経営統合なのか
今回の一件は京都新聞の社説にも取り上げられている(京都新聞2009年7月15日朝刊7面)。その背景として次のように書かれている。
「両社の存立基盤である国内市場は現在は好調だが、少子高齢化で将来的には縮小が避けられない。有力大手が組む強者連合で国内市場の変化に柔軟に対応しながら、成長が見込める海外市場を共同開拓して、国際競争で生き残りをめざす戦略だ(前掲紙)」
ポイントは最後の一行だろう。おそらく両社は「生き残り」を賭けて経営統合に踏み切ったのだ。
日本ではもはや生き残れないのか
裏を返せば、両社はともにもはや日本では生き残れないと踏んでいることになる。なぜ、日本では生き残れないのか。市場がないからだ。
両社合わせて約3兆8000億円の市場さえ、いずれ日本では維持できなくなると考えている可能性さえある。でなければ、今のところ経営上特に大きな問題を抱えているわけでもない両社が合併する意味がない。それぐらい激しい危機感、日本だけでビジネスしていてはゴーイングコンサーンを維持できない恐怖感に襲われての動きなのだろう。
その意味を、噛みしめる必要があると思う。
少子高齢日本の未来像
改めて日本が少子化社会になっていることを考え直すべきなのだろう。少子化社会は今後、F1、M1世代からF2、M2世代ぐらいまでをターゲットとするすべてのビジネスに影響をもたらす。
飲料、食料品はいうまでもない。外食産業もダメだろう。衣料品もちろんアウトだ。大学だってどんどん潰れていく可能性が高い。自動車はすでに売れなくなっている。若者の自動車保有率は右肩下がりである。エンターテイメントだって、全体的な市場を考えれば縮小していかざるを得ない。
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