国際会計基準審議会(IASB)では金融商品に関する会計基準の改訂を検討しています。債権等について回収ができないリスクが高くなった時、どのタイミングでどのように損失処理をすべきかが問題となっており、現在世界が直面している金融危機の影響を受けた議論が展開されています。
本サイトへの投稿記事は
aegifの国際会計基準専門ブログ IFRS of the day(http://aegif.typepad.jp/ifrs/)より引用しております。
IASBは6月25日にIAS第39号「金融商品:認識及び測定」の改訂について意見の募集を行うことを発表しました。
国際会計基準の金融商品会計は複雑すぎるという批判があり改訂の論点が多いのですが、今回は金融商品の損失処理が焦点になっています。
現行の国際会計基準では債権等について回収の見込みに問題があるといえるような客観的な事実が発生した時に回収が見込めない分を損失処理するものとしています。
この回収可能性に問題があるといえるような事実が発生した時、
という基準が、
現実にどのようなタイミングになるのか分かりにくい、とか、
問題があるといえる状況になるまで損失計上を待っているとかえって評価が甘くなる、とか、
批判されているのです。
特に世界的な金融危機が起きて企業の財政状態が急速に悪化したことにより、債権等の評価が今まで以上に重要な論点として検討課題になったようです。
ちなみに日本の会計基準では債権等について似たような規定があります。日本では債権等を債務者の財政状態や、経営成績等に応じて回収可能性を見積もり、回収が見込めない分を損失を計上します。
債務者の財政状態に問題が生じているという状況になったタイミングで損失を計上するという点については現行の国際会計基準と似ています。
それでは、国際会計基準は現在どのような改訂案が出ているのでしょうか。
見積キャッシュフロー法(expected cash flow approach)と呼ばれているもので、将来のキャッシュフローを見積もり、割引計算をすることで現在の価値にするものです。割引計算というのはファイナンスの分野ではおなじみの手法で、国際会計基準では現在の価値を求めるためによく使われています。
将来のキャッシュフロー、いついくら回収できるか、という見積りの中に貸し倒れのリスクを反映させていくので、今までのように一定の事実が発生するまで何もしない、ということにはなりません。
簡単に言ってしまいましたが、貸し倒れのリスクを評価し、計算するのはそれなりに手間のかかる作業になることが予想されます。
どの程度コストがかかるか、実務的に実行可能なものなのか、という点についてIASBは意見を求めています。
日本ではそもそも債権等については額面、受け取る金額で計上しています。割引計算で現在の価値に置き換えるということをしないので、日本の会計基準とはかなり考え方が異なっています。
国際会計基準は経済情勢の影響を受けながら、様々な議論を経て改訂されていきます。経済情勢の動向と共に、会計のあるべき姿というものも変化しているのです。
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