査定はギリギリに…は大ウソ

2009.07.18

組織・人材

査定はギリギリに…は大ウソ

小倉 広

半期ごとに行われるのが一般的な査定。皆さんはどのように行っていますか? 査定前後の一ヶ月はそれまでの五ヶ月間が凝縮され一気に吐き出される『縮図』。 査定前後の一ヶ月、ともすると直前までの駆け込みで成果を出そうとしていませんか?

「うーん、僕はダメだ!」

管理者向けの考課者研修を行っていた時のこと。
カリキュラムに従い、考課の流れ、留意点、模擬査定会議、と進み、
いよいよ最後のパートである模擬フィードバック面談へと進んだ時、
受講生の一人であるA課長が、いきなり唸り声を上げたではありませんか。

「ロープレで部下面談を想定するのだが、やればやる程、自分のダメさ加減が浮き彫りになる」

と頭を抱えています。

A課長のただならぬ様子に周囲の受講者も集まってきたので、研修を中断し彼らを巻き込みながら、A課長の悩みを共有し解決することにしました。

「何を話しているときにそう感じたの?」

受講者であるB部長が、あたかも講師のようなスタンスで質問を投げかけました。

「うん…査定のフィードバックで部下の顔を思い浮かべながら『ここが足りない。ここを直そう』なんてロープレしてたら、部下の心の声が聞こえてきたんですよ。『課長さぁ、そんなこと言うんだったら、なぜ、もっと早く言ってくれなかったんだよ!』ってね」

一瞬、「シン」という沈黙が通過しました。

「実際はどうだったんですか?」と私。

「オグラさん。確かに自分は、期待や改めるべき点を伝えていませんでした。日頃から気にはなっていたのですが、言いづらくてあと伸ばしにしているうちに半年経ってしまって…」。

他の受講者たちも黙って頷きます。
皆、自らに思い当たる節があるのでしょう。
実はこのA課長の苦悩やみなの沈黙の中には、人事考課の最も大切な側面が隠されています。

人事考課は通常、半期ごとの年二回行われます。
事前面談、一次考課、二次考課、査定結果のフィードバックそして翌期の目標設定といったフローが矢継ぎ早に一ヶ月間に詰め込まれるのです。
そこで考課者(上司)は査定前後の一ヶ月、ともすると直前までの駆け込みで成果を出そうとするのですが、これはオグ流では大ウソ。
すべてをこの一ヶ月でうまくやろうとしても、按配良くいかないのは、先のA課長の嘆きでおわかりのことでしょう。

そう、査定前後の一ヶ月はそれまでの五ヶ月間が凝縮され一気に吐き出される『縮図』。
ですから、その一ヶ月で部下が納得し成長のきっかけをつかみ、さらなるモチベーション・アップを得たならば、それ以前の五ヶ月が充実していた証拠。
あなたが上司として、部下育成とマネジメントが行き届き、成果が現れたのだと言えるでしょう。
逆に査定がマイナスに働き、、部下のモチベーションが下がったとしたら?それは、その一ヶ月がNGだったのではなく、それまでの五ヶ月を無為に過ごしたツケが回ってきた、と捉えるのです。先のA課長の懸念と同じですね。
大切なのは制度の運用ではなく、日常の業務と業務を通じて部下を育てること。くれぐれも一夜漬けで大切な査定をやり過ごそうなどと思わぬよう、ご用心ください。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。