「カロリーバランスとってる?」44歳にして引き締まった肉体美を誇る俳優・ミュージシャンの高橋克典がCMで語りかけるエースコックの「はるさめヌードル」。そのポジショニングが絶妙なのだ。
エースコックが「スープはるさめ」を発売したのが2001年。翌2002年に「はるさめヌードル」が発売された。はるさめシリーズは同社のドル箱商品であるが、その発売はエポックメイキングなできごとであったといえるだろう。なぜなら、エースコックといえば、1988年に「大盛りいか焼そば・スーパーカップ1.5」を発売した、今日に続く、「大盛り・がっつり系カップ麺」のパイオニアでもあるからだ。
はるさめシリーズの特徴は何といってもローカロリーであること。スープはるさめは90kcalから多くても150kcal未満。はるさめヌードルも140kcalから200kcal未満。ちなみに、コンビニのおにぎりが1個150kcalから200kcalだと思えばいい。おにぎり1個では寂しすぎるが、麺類1杯食べてそれなりの満足感が得られるのがこの商品のポイントなのだ。
もともとは、お昼休みの女子社員の「カロリー気になるけど、麺類食べたいの~」という切なる願いに対応するべく登場した。スープはるさめは今も「ワンタン」「かきたま」「野菜とわかめ」など、あっさり味中心のラインナップである。一方のはるさめヌードルは「豚キムチ」など、オトコ系がっつり味を充実させてきた。そのラインナップにターゲットユーザーの切なる願いと、それに対する商品の明確なポジショニングが現れている。
「特定健診・特定保健指導」。つまり「メタボ検診」が始まったのは2008年のこと。はるさめヌードルの発売はその遙か以前である。別段、法律に定められた健康診断で、「あなたはデブです」「あなたはデブ予備軍です」などと指摘されなくても、誰しも自分のカラダのことはよくわかる。ぷっくりでっぷりしたおなか。大胸筋じゃない、揺れる胸板。パンツに乗っかる腰まわりのでっぱり。ワタシ脱いだら凄いンです・・・。
そこで、『女もすなる「超低カロリーはるさめ食」といふものを、男もしてみむとてするなり』と、はるさめに興味を示したイノベーティブな男性ターゲットをいち早くとらえ、ポジショニングを変更したのである。
ポジショニングマップで表わすならば、縦軸が↑「がっつり味」↓「あっさり味」。横軸が →「健康第一!」←「不健康上等!」といったところだろうか。スープはるさめは「あっさり味」×「健康第一!」のポジションであることはわかりやすい。
「がっつり味」×「不健康上等!」の根性の入ったポジションは、ラーメン店であれば究極は「ラーメン二郎」だろう。ラーメン二郎のパワーは説明するまでもないだろうが、エースコック本来のがっつりっぷりも二郎に負けていない。
「スーパーカップ1.5」は「この味、やみつき、がっつリッチ!」とがっつりさをストレートに訴求している。「最後の一滴まで飲み干したくなる本格スープ」とする「飲み干す一杯」シリーズもまぎれもないがっつり系である。この「がっつり味」×「不健康上等!」の象限こそが、エースコック本来の姿であることがわかる。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。