「デュラムおばさん」はサッポロ一番のプロジェクトXか?

2009.08.21

営業・マーケティング

「デュラムおばさん」はサッポロ一番のプロジェクトXか?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

上戸彩がイメージキャラクターを務める「デュラムおばさんのカップパスタ」が発売以来好調な売れ行きを見せているという。その開発の背景を考察してみると、並々ならぬ開発の執念が感じられるのである。

「サンヨー食品」という社名を聞いてどんな会社かすぐに思い浮かばない人も多いかもしれない。しかし、「サッポロ一番」と聞けばすぐに即席麺の代表的ブランドを思い出せるはずだ。
サンヨー食品がサッポロ一番を発売したのは1961年。「サッポロ一番味噌ラーメン」は俳優の藤岡琢也が逝去する2年前まで35年間CMキャラクターを務め、その姿と共に人々の記憶に深く刻まれているに違いない。1975年にカップ麺の「サッポロ一番カップスター」をラインナップに加え、以来、即席麺一筋の商品開発を展開してきている。

いや、正確には「即席麺一筋」ではない。
同社の商品ラインナップを見るとよくわかる。袋麺、カップ麺ともに商品名には全て「サッポロ一番」の名が冠してある。その名は初代社長が全国のラーメンを食べ歩いて札幌ラーメンに感動して付けた名だという。サンヨー食品は「即席麺一筋」である以上に、「サッポロ一番一筋」であるのだ。

その一筋さからすると、今回の「デュラムおばさんのカップパスタ」は異例である。確かにパスタに「サッポロ一番」の名を冠するのはイタダケナイ気はするが、創業以来、サッポロ一番の発売以降は期間限定商品などを除けばその名がついていない商品は存在したことがないからだ。

開発には3~4年を要したという。その頃、2002年2月から始まった景気拡大はまだ継続しており、「いざなぎ景気越え」という声も聞かれていた。しかし、企業業績が労働配分に廻されない、「実感できない好景気」に消費者はランチや外食の価格抑制に動きはじめていたのだ。吉野家やすき家の店頭に人があふれている。コンビニ弁当の売れ行きも向上している。
外部環境は追い風だ。低価格で手軽な新商品ををコンビニなどで展開すれば勝機であると踏んだのだろう。そのためにはサッポロ一番だけでなく、商品の幅が欲しい。新商品を開発して既存の顧客に提供したい。そこからがサンヨー食品のプロジェクトXの始まりであったはずだ。

自社の戦力と顧客ニーズと競合環境に目を向けてみる。
手軽なカップ麺製品であれば、ラーメン類に加え定番のカップ焼きそばが挙げられるが、それは「オタフクソース」とのコラボ製品がある。だとすれば、パスタが狙い目である。
しかし、パスタには当時強敵がいた。日清食品の「スパ王」だ。
1分間湯煎でスピーディーにシコシコ食感の生麺が楽しめるというコンセプトのラーメン「ラ王」が市場に衝撃的なデビューを果たした。その派生商品として登場した「スパ王」も、1995年の登場以来「クセになる味」と根強いファンを持っていた。
生麺で人気のスパ王に対して自社にあるのは即席乾麺の技術。生麺に新たに踏み込むのか、即席乾麺で勝負するのか。議論百出だったのか、意外と結論はすぐに出たのか。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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