誰のためのデザイン? - デザイナー調味料ビン

2009.09.04

営業・マーケティング

誰のためのデザイン? - デザイナー調味料ビン

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

‘マーク・ニューソン’ というオーストラリア出身の プロダクトデザイナーはご存知ですか? 彼が手がけた製品のうち、 私たちが一番ピンとくる身近なデザインは、 au携帯電話「Talby」 でしょう。

私は、恥ずかしながら知りませんでした。
(そういえば聞いたことがあったような・・・のレベル)

世界的にはかなり有名な存在のようですが、
一般消費者には遠い存在ですよね。

さて、先月(2009年8月24日)から、
マーク・ニューソン氏がデザインした、

「味の素(R)」(調味料)

が新発売されています。

もちろん、中身はあの「味の素」でして、
ビンのデザインが違うだけです。

「味の素マークビン」

と呼ばれています。

同製品は、

「味の素(R)」

の発売100周年の記念として新発売されたもの。

味の素(株)のニュースリリースによれば、

“グローバルに通用する洗練されたデザインの
 新ボトル品種を発売し、商品鮮度をUPする事で
 新規消費者の獲得、使用者層のさらなる拡大を図ります”

とのこと。

で、実際一般消費者の評価はどうかというと・・・

他国ではわかりませんが、
日本の消費者にはあまり受けが良くないようです。

日経デザイン(2009年9月号)では、
既存の調味料ビン2種に、「マーク瓶」を加えた
3種類のビンの形状について、アンケート調査による
比較評価の結果が掲載されていました。

比較対象となったのは、
具体的には以下の3種です。

A:アジパンダビン(たれ目パンダが描かれているもの)
B:卓上小ビン(ビン下部がボテっとしているもの)
C:マークビン(三角錐のとがっている部分を切ったようなデザイン)

詳細は記事を見ていただきたいのですが、
圧倒的一番人気は、やはり「アジパンダビン」でした。

ビンに描かれた笑顔の「たれ目パンダ」を見ると、
思わずこちらも微笑んでしまうデザイン。

そもそも、擬人化(というか擬動物化)されたデザインに、
私たちは強く惹かれる傾向があります。

(とりわけ、「目」には無意識に注目してしまうのです)

この点が、今回の調査でも明確に現れています。

2番人気は、卓上小ビン。

こちらは、いわゆる「ウーマンボディ」に近い形状で、
スカートをはいた女性のイメージ。

親しみを感じやすいデザインだと言えます。

一方、マークビンは全く人気がないのです。

設問のうち、

「総合評価」
(あなたが実際に購入するとしたらどれが欲しいですか?)

の回答結果について数値(全体)を示しましょう。

A:アジパンダビン 59.7%
B:卓上小ビン  32.0%
C:マークビン  8.3%

回答者の1割の支持も得られていないのは、
新規層を獲得するのが狙いとしても、
かなり厳しい結果ですよね。

マークビンのデザインに当たって、
発売前のユーザー評価は行われなかったのでしょうか?

次のページ「使いにくさ」(使いにくそう・・・)

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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