共通点に焦点を当てて考える。
人事制度を作るとか教育研修を考えるとか、そんなお話をいただくとき、「うちの会社はこういう特殊なところがある」「この業界は特別だから」という観点から逃れられない方がとても多いと感じます。確かに同じ企業は二つとないので、独自性は大切にすべきなのですが、他と違うと思い込むことによるデメリットもあります。
前に、ブライダル(結婚式場)の会社から「営業社員にマンション営業のノウハウを吸収させたい」という話がありました。曰く、①契約してから実施(入居)までの期間が長く、その間の顧客フォローが大切、②一旦決めていただいて、その後にオプションの提案をして価格を上げていく方法、③立地というどうしようもない点を、いかにしてカバーするかがポイント、④リピート客が想定できないので、口コミと紹介をいかに増やすかが大切、といった点が共通しているので、敢えて他業界からそのノウハウを学びたいということでした。
こうやって共通点に焦点を当てると、自社や業界にはなかった気づき・発見が生まれる可能性があります。自分たちがやっていることの妥当性やレベルをチェックする機会にもなるでしょうし、そこから工夫やヒネリや新手法が出るかもしれません。「特殊だ」と思っていると、そういった視野からの刺激がなく、これまでやってきたことを徹底する、マニュアル化するという方向に流れてしまいがちです。
確かに自社や業界の特殊な点を考慮することは大切なのですが、「特殊でないこと」も必ずあるわけですから、そこもしっかり考慮して広い視野で吸収できることはしたいものです。「特殊だ」と思い込むことによって、進歩・進化するチャンスを失っている会社は少なくないように思います。
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2010.03.20
2015.12.13
NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。