米食品会社最大手のクラフト(Kraft)は英国の老舗洋菓子メーカー、キャドバリー(Cadbury)に102億ポンド(約1.5兆円)の買収提案をしたが、提示額が低いという理由で直ちに拒否された。条件としては、先週末の株価に31パーセントのプレミアを上乗せした金額で、60%を株式交換、40%を現金で支払う内容だが、相手から完全拒否されたため、株価の引き上げと現金支払部分を増やす方針だ。
今回の買収提案の目的は、海外市場でのプレゼンスを更に高めるということである。クラフトはヨーロッパ全域でも販売しているが、キャドベリーは英国市場を独占し、インドやオーストラリアのように英国植民地時代のマーケットにも進出している。クラフトはキャドバリーに比べ、従業員数で約2倍、売上で約8倍の規模だが、海外進出の面では、クラフトは45カ国、キャドベリーは60カ国と遅れをとっている。この買収でクラフトは、弱点であるブラジル、ロシア、インド等の未開発マーケットを手に入れたいという策略だ。
また、販路でも相当な相乗効果が期待できそうだ。クラフトはウォールマート等の量販店に強いが、キャドバリーはコンビニや新聞雑誌の販売店での売上が多く、この買収によってすぐにでも売上を増加することが出来ると目論んでいる。コスト削減によるシナジー効果でも最低約600億円、売上高で5%増、一株あたり利益で2%の増加を予想しており、プレミアムの31%は安いという評価だ。
次に企業価値(エンタープライズバリュー、EV)でみると、現在EBITDAの13倍と食品業界の平均(15~16倍)よりも低い水準で提案している。
今後、敵対的TOBや同業者からのビット(入札)提案等に発展しそうな予感だが、日本企業もうかうかしてはいられないだろう。弊社でも先日、中国系企業から日本の洋菓子メーカーを買収したいという相談を受けており、あまり再編が行われておらず、小さい規模の中小企業が多いこの業界にも再編の嵐が吹き荒れるかもしれない。
(参考資料)
・フィナンシャルタイムズ 2009年9月8日、9日の新聞記事
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2015.01.26
佐武 伸
株式会社サンベルトパートナーズ 代表取締役
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