今年3月、「990円ジーンズ」で衝撃の低価格路線強化を発表したファーストリテイリング傘下のカジュアル衣料品ブランド「ジーユー(g.u.)」。990円ジーンズは日経MJヒット商品番付2009年上期版にもランクインするほどの大ヒットとなったが、流通各社が同等の990円から、さらなる低価格な808円などで巻き返しを図ってきた。
ジーユーは流通各社の対抗に対して、この秋の新商品発表でそれらを余裕で突き放す戦略を発表した。
以下、その狙いと力の源泉を読み解いてみよう。
990円ジーンズは、今年3月の衝撃のデビューから半年。当初の販売目標であった50万本を倍の100万本に上方修正し、それすらも「目標達成は確実」と同社はメディアに発表している。
市場で大好評を得ているのは、節約志向・低価格志向を強める消費者のココロをとらえているのは間違いないが、そのプライシングの大胆さがウケたのは間違いない。ジーユーブランドのデビュー以来3年間は、言ってみれば鳴かず飛ばずの状態であった。その理由は「ユニクロの価格の概ね2/3」という中途半端なプライシングにあったのだ。
それを、今年3月に「全商品の8割をユニクロの半額以下にする」という大胆な価格改定を行った。その象徴的な存在が990円ジーンズだったのだ。
消費者の低価格志向は当面留まる気配はない。そのため、流通各社も手をこまねいているわけにいかず、対抗的に目玉商品として同等価格のジーンズを相次いで投入してきた。ザ・プライス:980円、ダイエー:808円、イオン:880円。イオンはジーユーと同じ100万本の販売目標を掲げている。
価格比較をすると、一見ジーユーが早くも劣後するポジションに追い込まれているように思えるが、そうなのだろうか。各社と同ブランドの戦略をもう少し深く読み解いてみよう。
それを読み解く一つのキーワードが「価格弾力性」。
商品価格の変動に対する需要の変化の大小を示すものであり、価格が下がれば売上げが急増し、上がれば激減する商品は「価格弾力性が高い」といい、その変化が少ないものは「価格弾力性が低い」ということになる。
通常、米などの生活必需品は価格弾力性が低い。同じ食品でも毎日一定量を消費する米と違い、嗜好品的な意味合いの強い飲料などの価格弾力性は高い。また、食品と異なり、保存がきき買いだめができるトイレットペーパーやボックスティッシュなども価格弾力性は高いタイプの商品である。
では、ジーンズはといえば、今日のカジュアルウェアとしては欠かすことができない存在であるが、多少古くなってもはき続けることはできる。従来の5,000円~1万円近くする商品であれば、昨今の景気低迷期には手が出しづらいが、安くなっていればついつい欲しくなる。ということは、価格弾力性が高い商品であることがわかる。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。