「目の付けどころがシャープでしょ」といえば、おなじみのキャッチフレーズ。そのシャープさぶりは、目の付けどころだけではなく「値」の付けどころにも発揮されている。
照明マーケットのPEST変化
実は知らなかったのだが、家庭用照明器具はこれまで極めて閉鎖的な市場だった。過去何十年もの間、新規参入するメーカーはほとんど皆無だったらしい。なぜなら「白熱電球や蛍光灯管などの光源は専用設備で量産する設備産業のため、新規参入は実質的に不可能。そもそも成熟した照明市場にリスクを冒して参入する利点もなかった(日経産業新聞2009年10月2日付9面)」だったからだ。
確かに、今さら照明器具をぼんぼん付けるようなスペースが増えるはずもない。家やマンションは減少傾向にあるとはいえ、確かに毎年それなりの新築物件がある。しかし、そこはすでに既存メーカーが完全に押さえている。しかも、そもそも単価が安い商品である。後発メーカーが今から巨額の設備投資をしても採算に合わないわけだ。
が、この照明マーケットにパラダイムシフトが起こった。いわゆるPEST分析をするなら、変化はPoliticalとSocial、Technologicalの分野で起きた。まず大きいのは環境である。地球温暖化対応は巨大なうねりとなりつつあり、環境対策としての省エネ、省資源は避けられない動きとなっていたのだ。
このうねりを受けて前政権でさえすでに、大幅なCO2削減を打ち出している。そこで注目を集めたのがLED技術だ。
LEDが変えた照明マーケットの力学
LEDは理想の照明器具といわれる。なぜなら消費電力が従来の白熱球の約8分の1と少なく、しかも寿命は40倍に伸びる。極めてエコな照明器具なのだ。
しかも、このLEDに限っては製造も簡単である。極端な話、秋葉原あたりで部品をそろえさえすれば、個人でも組み立てることができる。参入障壁が極めて低いのがLEDなのだ。だから異業種からの参入が相次いでいる。ざっとあげるだけでローム、大和ハウス、三菱化学工業など社名を聞いただけでは、照明とはまったく関係ないような企業が揃う。
そこに満を持して突撃したのがシャープだ。同社は今年、7月15日に発売予定だった家庭用LED電球の発売を一度、先送りしている。その理由は、事前に集まった注文が予想以上だったため生産が追いつかなかったのだ。もちろんシャープも照明市場に関しては、まったくの後発組。LED以前に照明器具は扱っていなかった。そのシャープがLEDマーケットでは、一躍マーケットリーダーとなったのだ。
シャープ登場以前のLEDマーケット
そもそもLEDが開発されたのは、別に今年に入ってからの話ではない。LED電球そのものはすでに市場に出回っていた。が、ほとんどと言っていいぐらいに売れていなかった。エコな商品として注目は集めていたものの、ばか売れするにまでは至っていなかったのだ。
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